ピルは有効だが、欧米に比べ利用率が低い

 PMSの症状が重い場合は、薬物療法を行います。ピルで排卵を抑制する産婦人科での治療と、セロトニンを調節する精神科での治療があります。「日本ではピルへの抵抗感が強く生殖可能年齢女性の5%しか服用者がいません。ヨーロッパでは服用者が50%。ピルは生理痛とPMSを同時に改善できて便利です。ファーストチョイスとしてもっと使ってもいいのでは」と武田さんは話します。

 ただし、すべてのピルがうつ症状などの精神症状には有効ではなくて、ヤーズというピルだけが精神症状にも効果があります。「症状がゼロになるわけではありませんが、精神症状には漢方治療で症状が軽減したというデータが出ています」と武田さん。

PMSは教育だけでも症状が改善する

 「PMSの治療で大切なのは疾患教育です。症状が軽ければ、教育だけで改善する場合もあります」と話す武田さん。実は次のようなデータがあるそうです。「東日本大震災の前に仙台の高校で月経前症候群についての講義を行いました。震災後に彼女たちの症状がどう変わったかを調査したところ、変化がありませんでした。一方、講義をしなかった高校では、震災後にPMSが悪化した生徒が多かったのです」。つまり教育によって、PMSの悪化が防げたということです。

 武田さんの講義は男子生徒も一緒に聞いたそう。その感想に「女子にしかない悩みがあることが分かった。大きく広い心で助けてあげたい」というものがありました。これはまさに、今社会全体に求められている認知と理解です。「学校での教育は性教育が中心です。女性ホルモンの変化については女親でもよく知りません。正しい知識が広まり、彼らのような男子が増えていけば、女性たちが月経前症候群に苦しむことも減っていくのではないでしょうか」と武田さんは話します。

(取材・文/日経DUAL編集部 撮影/花井智子、鈴木愛子)