「他のママもこんな風に怒ったりするんだ」と分かる
―― これから受験を考えるママ・パパ・お子さんが、この漫画を通じて得られるものって何でしょうか?
高瀬さん(以下、敬称略) 中学受験はその合否の結果での子どもの気持ちを考えるゆえに、あまり他の親御さんと気持ちを共有できる機会がないのが特徴的ではないかと思います。なので「ああ、やっぱり他のママさんもこんなふうに怒ったりするんだ」とか「こんな不安な気持ちになるのは自分だけじゃないんだ」とこの漫画を通して思っていただけたらうれしいです。
特に…男子が本気出すのは本当に本当に本当に…遅い…! 直前にならないとエンジンかかりません…!! それを横で見守る母の気持ちたるや…! 共感していただけたら本望です!!
小林さん(以下、敬称略) この漫画は、中学受験入り口のガイドとなるのはもちろんのこと、そこから先の期間も、ずっと気持ちに寄り添ってくれる1冊になると思います。多くのママ・パパが経験するであろう出来事と気持ちを詰め込んであるので、不安なとき、イライラしたとき、親として自信がなくなったときなど、折に触れて手にとって心の支えにしていただければと思います。
あと、等身大の小学生の日常が描かれている漫画って実はすごく少ない。お子さんにとっても、コウタたちは身近で共感できる存在に感じてもらえるのではと思います。
編集N 一番のポイントは、「中学受験をすること自体が正解ではない」ことを前提に描かれていることです。習い事の延長で始めた受験、子どもの希望で始めた受験、親の思いで始めた受験…。そして、受験をする、やめる、志望校に受かる、受からないと結果も様々。そうしたいろんな家族の中学受験を“体験”できるのがこの漫画のいいところだと思います。
漫画の中には、塾選び、夫婦の協力体制、子どもとの接し方……いろんなノウハウや共感ポイントがあります。「こんな塾の先生いたらいいな」(P26)、「パパがガス抜きしてくれることもあるよね」(P135)とか。特にこのせりふは好きですね。
■「行きたい学校がなければ中学受験なんてしなくてもいいと思ってるんです」(塾長/P26)
→地方出身者で中学受験にやや懐疑的だった私は目からウロコでした。
■「第一志望で入った子も第六志望で入った子もみーんな同じように楽しそうだったりするのよねぇ…!」(先輩ママ/P167)
→こうありたい、こうあってほしいなと思いました。受験のその先が「楽しくない」だなんて嫌ですもんね。
DUAL編集長・羽生 これから受験を考えるママ、特に「あまり積極的に考えていない」というパパがご家庭にいれば、ぜひご夫婦で読んでもらいたいです。漫画なので、気軽に寝っころがりながら読めますし(笑)。
いきなり塾を選び、体験塾に入ってしまうと、その渦に飲みこまれてしまいます。そしてお金を払っていざスタートしたら、引けなくなってしまうのも事実です。その前に、この漫画を最後まで読んでほしい。「全体把握」してもらえれば、不本意な受験対策や、親の見えだけの受験競争に一番大事な子どもが巻き込まれなくてすむかな、って思います。
編集S そうですね、この漫画を読んでから受験勉強をスタートするのと、読まないで飛び込むのとでは、全然心構えというか、覚悟が違ってくるような気がします。私も、「あ、こんな経験するんだろうな」「受験当日は、心細く見守るのかな」「受験直前は、インフルエンザにひやひやするんだな」など、具体的なイメージが湧きました。
高瀬さん、小林さんのお子さんが実際に体験した中学受験
―― 高瀬さん、小林さんは実際に、お子さんの中学受験を経験されています。
高瀬 わが家はそんなわけで、中学受験を考えずに、のほほんとスポーツだけさせて育てていたのですが、たまたま受験が盛んな地域に住んでいることもあり、息子のほうから受験を希望してきました。
しかしそれが5年生の夏という遅さで、遅れをとったせいでかなりの苦戦を強いられていたようです。親として歯がゆい場面がかなりありましたし、衝突も、「やめたい」と言い出したことも何度もありました。
しかし、問題が起こるたびに息子と膝を突き合わせて話し合ったり、塾の先生とも「今後どうやって生きていきたいか」ということを真剣に話したりと、思春期前の時期にがっつり向き合ったという良い経験ができたと思っています。
しかし母はどんどん視野が狭くなります…ので、この結果がすべてではないという気持ちをぶれないように持つためにも、なるべくなら趣味を持ったり気晴らしをしながら、笑顔で並走できたら良いのではないかと思います。(その「笑顔」がテストの結果で一瞬にして崩れていたのですが(笑)。修行が足りませんでした!)
小林 中学受験では、わが子の能力や性格はもちろんのこと、私自身の生き方や価値観、夫婦の関係、家計の見通しなど、本当に多くのことを突き付けられたように思います。「人として自分は人生で何に重きを置くのか。そして子どもには何を伝えたいのか」を自分自身に問いかけるいい機会になりました。
わが家もそうですが、特に共働きの家庭はどこも、日々の生活を回すだけで精一杯になってしまいますよね。なので中学受験は、するにしても、しないにしても、多くの親にとって「わが家の教育方針を一度じっくり考える」いい機会になってくれるのではと思います。そしてそこで得た結論は、その先の子育ての方向性を照らしてくれるのではないかなと。
あと具体的なアドバイスとしては、もし「受験する」となったならば、親、特に母親はせっせと「楽しいことを見つけてストレス発散」に励み、「外野の目を気にしない強さの獲得」に励む。この2つが、心の平和、家庭内の平和のためにも大事なように思います。でも、じゃあ実際に私自身がやったことといえば、「息子の模試のあまりの結果に焦って、数万円もする『集中できる椅子』をネットで衝動買いした」こととかばかりで…(苦笑)。
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