編集者が読むたびに泣いたシーンは
―― 皆さんの特に好きなシーンはどこですか。
高瀬 この漫画を描いている時期とまるっきり同じ時期に、わが家の長男が受験生でしたので、男子受験生「あるある」的な描写には、リアルさにかなり自信があります(笑)。男子のお母さんはコウタの様子を見て「うちだけじゃないんだ…!」とホッとしていただけたらと思います(笑)。
あと、赤城家の結末には涙しながら描きました。でも、合格も不合格も、それぞれがその後の人生に大きな糧となっていく様子が描ければいいなと願いながら、作画に取り組みました。
小林 どのシーンも本当にキャラクターの表情がよくて引き込まれるのですが、なかでも、受験会場に向かう子どもと、その背中を親が見つめるシーンには心を打たれました。親子一緒に歩んできたつもりでも、本番では子どもは自分一人で立ち向かわなくてはならず、親はそれをただ遠くで見守ることしかできない。受験本番というだけでなく、親離れ子離れをも感じさせるシーンに仕上がっていて、読んでグッと切なくなりました。
リアルだなと思うのは、明子が5話で「受験なんてやめなさい!!」とコウタに怒りをぶつけるシーン(ムックP53)、12話で「スーパー家庭教師いないの!?」と不安になるシーン(P112)、13話で「私が受験を選んだせいで…」と後悔するシーン(P128)ですね。中学受験を選んだ母はまさに、1年365日×3年間、この「イライラ」と「不安」と「後悔」の無限ループにハマって苦しむことになると思います…。
あと何度読んでも泣いてしまうのは、11話で涼子が舞が生まれたときのことを思い出して泣き崩れるシーン(P107)、13話で明子が「一つでもいいから合格を」と泣くシーン(P126)、17話で亮介が布団をかぶって泣いているシーン(P163)ですね。展開が分かっているのに、高瀬さんの表現力に引き込まれて、後半はもう読むたびに感情移入して泣いてしまいます。
羽生 そうですよね! 5話の、山吹家の「もう受験なんてやめちゃいなさい!」と母親がつい怒りと焦りにまかせて、まだ幼い息子を怒鳴っちゃうところ…。これはほとんどのママさんたちが体験したことではないでしょうか。
あと、11話の青山家も同感です! 舞ちゃん(小6)の受験ストレスで脱毛しているところを発見してしまった母、そして生まれたばかりの赤ちゃんだったころを思い出した夫婦、自分(母親)が自分の学歴コンプレックスを乗り越えて、娘の本当にやりたいことを尊重して受験を思い切ってやめると抱き合う瞬間・・・うううぅ。これははっきりいってもう何度ゲラ(原稿)を見ても泣けましたね。編集部員にも、よく泣いている現場を目撃されたよね(苦笑)。
そしてそして、15話~16話の各家庭の合格発表の回は、もう、号泣モノでしたよ。「こんなに努力したのにかなわないなんてそんな残酷なことってあるの…」って本気で受験を恨んだり。でも最後の最後には、どの家庭でも納得のいく進路を見つけ出したところ。この最終回を読めただけで、「受験ってこういうものなんだな。こういう心構えが必要なんだな」とリアルに理解できました。
編集N わが家は、4月から長男が小3、次男が年中なので、中学受験は未経験ですがリアルに感じるシーンがほんっとうに多い。登場人物も「こういう子、こういうママ、パパいるよね(笑)って。これは、高瀬さん、小林さんが、自身の経験や周囲のママ・パパの日常を漫画に反映させてくださったからだと思います。そして、未経験者なのに数多くのシーンで泣きます。私がDUALでの連載中、デスクでモニターを見ながらおえつした言葉を厳選しました。
「皆が君を応援してるから…!!」(P127-128)
「受験させてくれて支えてくれて本当に…ありがとう」(P152)
「心から『ただもう健康でいてくれれば』と願った」(P107)
どんなシーンかは、ネタバレになるのでここでは明かしませんが、号泣間違いナシ!だと思います。
編集S わが家にも4月から小3になる息子がいます。ストーリーの大きな流れや、結末はもちろん感動モノなのですが、ちょっとした描写が本当にリアルで、苦笑いできます。4話のコウタの様子…たとえば塾のノートの書き方がめちゃくちゃだったり、親がスケジューリングしなければと明子が覚悟を決めたり、学校に加えて塾のお知らせも積みあがったり、最初の月例テストの偏差値が37.1だったり…。ザ・男子を育てているママ・パパにとっては、「塾に通うと、うちもこういう感じになるんだな」ということが、とてもリアルに“体験”できると思います。
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(文/日経DUAL編集部 砂山絵理子)