ゲームに熱中するエネルギーを、勉強にも注いでくれたら……。そう願う親御さんは多いことでしょう。老若男女ファンを獲得する“ゲーム”の仕組みを取り入れて、子どものタイプに合わせた“やる気スイッチ”をオンにさせるのが、「ゲーミフィケーション勉強法」。悪影響ばかりが取り沙汰されがちなゲームですが、視点を変えて「ゲームに学び、賢く付き合う」ことを考えると、子どものやる気スイッチを押したり、親子のよきコミュニケーションツールにもなったりするそうです。

『子どものやる気を引き出す ゲーミフィケーション勉強法』(講談社)の著者であり、勉強のやり方を教える塾「プラスティー」代表の清水章弘さんと、学習アプリの開発をしている綿貫知哉さんに「ゲーミフィケーション勉強法」について話を聞きました。4つの学習タイプと、それぞれの達成感を感じる環境づくりについて紹介した前回に引き続き、第2回は、ゲームとの付き合い方や、攻略法を試行錯誤することで得られる力についてお伝えします。

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制限時間があるゲーム。だからこそ効率化を考えるようになった

日経DUAL編集部 前回のインタビューでは、勉強におけるゲーミフィケーションの一番の役割は、「動機付け」とおっしゃっていましたね。それ以外にもゲームから学ぶことはあるのでしょうか?

綿貫さん(以下、敬称略) ゲーミフィケーション勉強法は、勉強をやる気にさせる動機付けだけでなく、他にもたくさん良い点があります。

―― 清水さんと綿貫さんは子どものころ、ゲームにハマっていましたか? ゲームに熱中していたことによって、何か勉強に生かされたことはありますか?

綿貫 私は子どものころからゲームが大好きで、大学卒業後はゲーム会社に就職しました。当時はゲームボーイポケットや、NINTENDO64がはやっていましたね。でも、家では1日1時間しかゲームをしてはいけない、という決まりがあったんです。

 1時間なんてあっという間に過ぎてしまうじゃないですか? だから、私はその時間内に1秒でも長くゲームに触っていられるように、ゲームに触れない時間に攻略本を熟読しました。

「ゲームをしながら攻略本を読んでいては、その時間がもったいない」と思ったからです。

 攻略本を読みながら、「ここはこういけば最短ルートになるんだな」とか「ここを通るときは、こことここに気を付けなければならないんだな」というように、ゲームの進め方を頭に入れておきました。そうするうちに「要点を押さえて読む力」が付いてきたのです。この読み方は、高校受験や大学受験で参考書を読むときにとても生かされました。

 親御さんの中には、「うちの子は読書といえばゲーム本しか読まなくて」と悩んでいる人がいるかもしれません。小説や図鑑など本に触れることはもちろんとてもいいことですが、ゲーム本であっても、目標・課題をクリアするために真剣に方法を探り、頭で考えることは将来につながる力だと私は思います。「ゲームばかりしていると頭が悪くなる」など悪影響をもたらすものだという印象が強いかもしれませんが、実際、私の友人で王道のレースゲームの「マリオカート64」日本チャンピオンは、受験でも成果を上げており、東京大学に進学しています。

勉強のやり方を教える塾「プラスティー」代表の清水章弘さん(写真左)と、学習アプリの開発をしている綿貫知哉さん(右)
勉強のやり方を教える塾「プラスティー」代表の清水章弘さん(写真左)と、学習アプリの開発をしている綿貫知哉さん(右)

<次のページからの内容>
・ タイマー、暗記ドア…自らルールを設定し、勉強をゲーム化
・ 【ゲーム化勉強法】自分でルールを設定し効果を上げる
・ 今の子どもに足りないのは知的なタフさ。試行錯誤する力はゲームで鍛えられる
・ いかなるゲームにも勝ち負けにこだわるだけでなく、戦略が重要
・ わが子を知りたいと思ったら、親もゲームをやってみよう