「男性の家庭進出」を進めるにはどうすればいい? 全国から集まったアイデアのうち、書類選考で勝ち残った5組の学生による公開プレゼンテーションが3月13日、東京都千代田区の会場で行われました。頭の柔らかい“今どきの学生”は「男性育休」や「男の家庭進出」にどんなイメージを持ち、どんな企業で働きたいと思っているのでしょうか。イクメンプロジェクト推進委員会主催の「Social Business Idea Contest」の模様を2回に分けてお伝えします。

 「男性の一層の『家庭進出』を促し、男女ともに仕事も家庭もあきらめないための方策」をテーマにイクメンプロジェクト推進委員会がソーシャルビジネスのアイデアを募集。斬新で柔軟なアイデアが全国から48件寄せられ、書類選考を通過した5組が、審査委員と観客の前で公開プレゼンテーションを行いました。

・コーディネーター

堀江敦子さん(スリール株式会社 代表取締役社長)

・審査委員

新田龍さん(第4回イクメンの星/働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役)

高橋一晃さん(株式会社TBSテレビ 情報制作局 プロデューサー/スーパーダディ協会代表)

羽生祥子(日経DUAL編集長)

育休パパとインターン学生をマッチ

 育休を取るパパと、インターン学生をマッチングさせる──。見事グランプリに輝いたのは、九州大学の「ヤンソンブラザーズ」チームによる斬新なアイデアでした。タイトルは「未来の育児休暇 提案書」。チームのうち2人が代表して会場でプレゼンを行いました。

 「パパが育児休業を取りたい、と考えたときに、現在は様々な障壁があります。長期間業務を休むことへの上司の無理解、同僚に対する負い目、また育休を取ることで給料が減り、経済的にも厳しくなる、という不安もあります。一方、未来を担う学生に目を向けると、子どもを将来持つときに、仕事と育児のバランスが取れるのか、不安に思っています。

 そこで私たちは、育休取得を希望するパパと、企業へのインターンシップを希望する学生をマッチングさせるサービスの導入を提案します。このシステムを導入することで育休を取りたいパパ、インターンしたい学生、学生を採りたい会社の3者の希望をかなえることができます。

 育休取得者は業務の一部をインターン学生に任せ、家庭で子育てをします。また育休取得者が出社する必要があるときは、その間の育児をインターン学生が担います。これは大学で単位が出るカリキュラムとして実施します。そのためのスケジュール調整や問題が発生したときの対応は、マッチングサービスのスタッフが対応します。

九州大学の「ヤンソンブラザーズ」チームが見事グランプリに
九州大学の「ヤンソンブラザーズ」チームが見事グランプリに

 育休取得期間中は、現状の育休制度では給与の65%が受け取れますが、これでは収入面で不安が募ってしまいます。そこで、育休取得前と同じ給与が100%保証されるよう、国から補助金を支給します。補助金は未来への投資ということで『赤ちゃん基金』という基金を設けて、そこに集まったお金でまかないます。期間は、大学在学中の3カ月から1年ぐらいを想定していますが、1人の育休者に対して1人の学生というよりも、会社の組織全体で、必要な数の学生を募集する形を取ります」

 とはいえ、ある程度の役職に就いているパパの代わりを、学生インターンが務めるのは難しいもの。その場合は、例えば一番末端の「ヒラ」の地位に学生インターンを入れて「みんなが一時的に一つ上の役職に就く」システムでまかなう、と提案しました。

 「この計画を導入することで、経済的にも不安がなく、気兼ねをせずに余裕を持って育休を取れる環境を社会に浸透させていきます。その結果、金銭面やキャリア面、社会の空気の面で、不安要素がなくなり、育休を取りやすくなります。育休取得で会社の労働力が不足するというデメリットが抑えられるため、会社のなかで育休取得を促す雰囲気が生まれます。

 また、インターン学生は実務だけでなく、仕事と育児のバランスを取ることも学べ、将来子どもを持つことを積極的に考えるようになります。その結果、将来、自分を含めて周囲が育休を取ることに対して悪いイメージを持つことが払拭されます。育休に関わる不安要素の払拭と、育児と仕事のバランスを含めた働き方を学べる機会を学生に提供することで、20〜30年後の日本にベビーブームが起きるような未来が到来することを目標とします」

チーム全体のキャリア研修にもなる

 「ヤンソンブラザーズ」チームは審査委員全員から高い企画力を評価され、見事グランプリを受賞。審査委員の羽生祥子・日経DUAL編集長は「就職したい学生、リクルートしたい企業、企業と家庭の板挟みになっている父親をマッチングしたのが斬新。3者がウィンウィンで、仕組みとしても覚えやすいですね」とコメントしました。

審査委員を務めた羽生祥子・日経DUAL編集長
審査委員を務めた羽生祥子・日経DUAL編集長

 加えて、内容が実現可能な点も高評価につながりました。