「ママの育休は1〜2年が一般的で、その期間を学生でまかなうのは難しい気がしますが、パパの育休は2週間〜長くても3カ月なので、その間をインターンでまかなうというのは可能に思えます。短期間だからこそ、マネジメントをうまく考えればよい。役職に就いているパパが抜けた穴を学生インターンが補うのは無理なので、抜けた穴を一つ下の人が埋めて、その人の抜けた穴はもう一つ下の人が埋めて、順番に繰り上げていき、一番下の人の代わりに学生を入れるというのも素晴らしいアイデア。その期間はチーム全体としてのキャリア研修の期間と考えればとても効果的ですよね。また、育休を取ると収入が減るので男性が取りづらいという問題点を解決するために、国が補助金を出して100%の給与を保証する『赤ちゃん基金』という発想も、現実を分析してよく考えられています」(羽生編集長)

男子就活生の49.5%は育休を希望

 準グランプリに輝いたのは、玉川大学の「玉川大学中村ゼミ」チーム。「大学生が発信者となり、学生向けに育児に関する啓発動画をSNSで発信して意識を高める」というプロジェクトを提案しました。

 まず「玉川大学中村ゼミ」チームは、「将来的に育児休業を利用したいと思う男子就活生の割合は49.5%」というデータを提示。なぜ、啓発ビデオのターゲットを学生にすべきと考えるのかを説明しました。

 「就活生は企業選びの際に、育児制度を判断材料の一つにしています。学生がさらに育児に対する意識を高く持てば、就職活動の企業選びに育児制度の充実度をさらに重視するようになります。すると企業もよい人材を採用するために自社の育児制度を見直すようになると考えました」

 手段は、若い人たちにSNSで拡散されやすい「動画」を選びました。

 「特に、内容が面白くて共感でき、生活に役立ち、社会的に重要な内容であれば拡散されやすい傾向があります」と説明。「例えば、若者が面白いと思うラップにのせてメッセージを伝えるのはどうでしょうか」と、チームの1人がサングラスを着用してラップを披露、拍手喝采を浴びました。「他にも、若者に共感してもらうために、新生児の夜泣きを『就寝後2時間おきにLINEの電話が鳴る』など若者カルチャーにつなげて例えれば、うまく伝わるのではないかと考えます」

 「資金調達は、インターネットサイトを通じて広く資金を集めるクラウドファンディングを想定しています。支援者に対するリターンは、名刺やHPなどでイクメンプロジェクトのロゴを使用する権利を与える、大学でゲストスピーカーとして育児や人生について講演する権利などはいかがでしょう。

 クラウドファンディングで予算を集め、動画を作成。若者の間で話題になり、SNSで拡散され、さらにマスコミなどで『育児制度の充実で企業選ぶ就活生が8割超え、企業側も本格的な制度見直しへ』『男性用育児アプリや育児用品がバカ売れ』などの見出しが報道され、ムーブメントが加速すると考えられます。大学生によって、遅くとも1年以内にムーブメントを起こせると思います」

ラップも披露した玉川大学の「玉川大学中村ゼミ」チーム
ラップも披露した玉川大学の「玉川大学中村ゼミ」チーム

 「玉川大学中村ゼミ」チームは、ラップの実演も後押しして「プレゼン力」が評価され、準グランプリを獲得。審査委員の羽生編集長は「将来育休を取りたいという男子就活生のパーセンテージを出していましたが、これを役人や女性側がお仕着せがましく上から目線で言うのではなく、学生が同世代の学生に向けて発信することに大きな意義があると思います」と評価。

 さらに「動画だと大学生にもとっつきやすいですね。いったん拡散すると一気にスタンダードになるという、今らしいアイデアです。クラウドファンディングでコストをまかなうというのも素晴らしい。参加意識が芽生えるし、リターンもあるので広がりがありますよね。せっかく準グランプリをとったので、どんな動画にするか、人選なども具体的に考えるなどして、実現に向けてぜひ発信し続けてください」とコメントしました。

「子連れパパは割引」のイクメンデー

 「なぜイクメンが増えないのか、それは、イクメンとして『行動するメリット』がうまく伝わっていないからではないか、と考えました」。そうプレゼンしたのは、工学院大学のtsuchiyaさん。tsuchiyaさんは「イクメンプロジェクト」そのものの認知度アップが必要、という視点から提案を行いました。

 まず、これまでのイクメンプロジェクトが「既にイクメンの人」または「イクメンに強い関心を持っている人」向けのものが多く、ローカル規模のものが多い。その結果、「それ以外の人に関心を持たれていない」と問題点を指摘。その課題を解決するために「金銭的メリットを強調した全国規模のイクメンデー」を推進することを提案しました。

「イクメンデー」を提案する工学院大学のtsuchiyaさん
「イクメンデー」を提案する工学院大学のtsuchiyaさん

 「『イクメンデー』とは『働くパパと子どもが一緒でお得な日!』のこと。各企業がイクメンデーを設定。『ドリンク1杯無料』など『子どもと一緒』が大きなメリットになるような内容を考え、テレビやネット、アプリなどでプロモーションします。

 例えば映画館の場合、パパと子どもで来館したら、一般料金通常1800円のところ、イクメンデー料金を1000円に設定します。単価は下がりますが、子どもを連れて来ることで、来場者数はアップ。利益率の高いポップコーンやドリンクなどの飲食物の売り上げが上がり、結果的に収益がアップするのではないかと考えます。

 イクメンデーを今はやりのプレミアムフライデーや連休に絡めると、効果がより大きくなると思います。イクメンデーの実施で、パパは育児にさらに参加し、ママはパパが育児に参加することで負担が軽減され、企業は売り上げアップや新規顧客の獲得が実現でき、ウィンウィンウィンとなります」