三上寛そして、寺山修司

 歌の途中で、ふいに寛さんがつぶやいた「吸いさしの煙草で北を指すときの北暗ければ望郷ならず」と。おお、寺山修司(歌集『田園に死す』)だ! と思ったら泣けた。


こんなかっこいいオヤジになりたいもんだ、とホント思いました

 終わってから、「父さん、泣いてたね」って言われたけど、「サビで三上寛さんの吠え声を聞いたら、体が共鳴して震えたもんね。それに寺山の歌だよ。そりゃ涙も出るさ。あのとき、寛さんの背後に暗い北の海が見えて、カモメが飛んでたんだよ」って、熱く語ってしまった。

 三上寛さんは寺山修司の映画『田園に死す』や大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』にも出演していることなど、終演後のラーメン居酒屋で臨時講義する父。映画好きの息子が見たら、また、語り合えるだろう。

 「父さん、寺山修司の本、今も持ってる?」と言うから「もちろん」。三上寛さんも休憩中の会話の中で息子に言ってくれていた。「君らには昔のものかもしれないけど、興味を持ったら寺山とか読むといいよ」と。

 若いときに聞いた歌や読んだ本の影響力は計り知れない。たとえ夢見たことがかなわなくても、いつまでも心の奥に熾火(おきび)のように燃えている

 息子たちもそんな歌い手や、作家に出会えたら幸いだと、いつも思っている父です。いや、彼らも、もうすでに出会っているのかもしれないね。


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三上 寛 (みかみ かん)
1950年青森県出身。67年同郷の詩人、寺山修司などの影響を受けて現代詩を書き始める。 69年ライブ活動開始。71年レコードデビュー。日本を代表するフォークシンガーの一人。詩人として詩集やエッセイなど著書多数。 映画『世界で一番美しい夜』『戦場のメリークリスマス』『トパーズ』などに出演する俳優としての顔も知られる。