ファミリア創業者である祖母は元祖デュアラー
―― 岡崎さんのおばあさまに当たる、ファミリアの創業者の一人、坂野惇子さんをヒロインのモデルとした連続テレビ小説『べっぴんさん』が放送中です。反響はいかがですか。ブランドそのものへの影響はありますか。
岡崎忠彦氏(以下、敬称略) まず、お店にお客さんがたくさん来てくださるようになりました。売り上げが伸びるとかではなくて、ドラマを見た方がお店に足を運んで、色々なお話をしてくださるようになったんです。それはうれしいですね。そこでまた新しい“気づき”があったりしますからね。
認知度も上がりました。神戸のブランドなので関西ではたくさんの方に知っていただいていますが、全国的にはまだまだ。しかも、ただ認知度が上がるだけでなくて、ファミリアのものづくりに対する姿勢を伝えることができた。ドラマのタイトルにもなっているように、僕たちは手にした人の心に残るような「特別にあつらえた品」=「別品(べっぴん)」を目指して、見えないところも手を抜かず真面目にものづくりをしてきたので、そこを多くの方に知っていただけたのは本当に嬉しいですね。
『べっぴんさん』はあくまでフィクションですが、そこで描かれるテーマの1つは働くお母さんと子どもの葛藤です。それがドラマになることで、お母さんたちの悩みが「見える化」された。当時としては珍しかったけど、今は仕事をしているお母さんはすごく多くて、時代に合っていますよね。そういう意味でもNHKのチームはクリエーティブだなぁと思います。
何より、おばあちゃんが喜んでいると思いますよ、“べっぴんさん”にしてもらって(笑)。
―― ドラマでは、ヒロイン・すみれは仕事に没頭するあまり、時間を忘れて帰宅が遅くなったり、子どもと一緒に朝食を食べる約束を守れなかったり…多忙な様子が描かれます。実際、おばあさまも仕事に忙しい日々を送っていらっしゃいましたか?
岡崎 ほとんど寝てなかったんじゃないかな。おばあちゃんの家によく泊まりに行っていたのですが、仕事で遅くなることも多く、帰ってきたら帰ってきたで、ずっと書き物していましたから。おじいちゃんのほうが早く寝てましたね。僕は30代のころまでおばあちゃんの家の近くに住んでいたこともあって多くのことを学びましたが、なかでも“好奇心”についてですね。おばあちゃんは「人間、好奇心がなくなったときが死ぬときだ」とよく言っていました。僕もいろんなことに好奇心を持って、日々発見があるような生活を送れるようにしたいと、常々思っています。