統計データを使って、子育てや教育にまつわる「DUALな疑問」に答える本連載。第43回は保育所と虐待の関係についてです。この春もゼロにはならなかった待機児童。その問題が虐待とどのように結びつくのでしょうか。舞田敏彦さんが分析します。

 

0~5歳で保育園に入っているのは3人に1人

 こんにちは。教育社会学者の舞田敏彦です。今年も各地で、保育所落選の悲鳴が上がりました。今はSNSがありますので、こういう声がたちどころに伝わってきます。

 どうにでも操作できる「待機児童数」に安堵しきっている自治体に喝を入れるためにも、SNSにガンガン落選通知をアップし、「保育園に入りたい!」の思いを可視化していきましょう(駒崎弘樹氏公式ブログ「『保育園に入りたい』を可視化しよう」2017年2月2日)。これぞ、現代型の社会運動です。

 共働き世帯の増加により、需要が著しく増している保育所ですが、就学前の乳幼児人口のうち、この施設に入れているお子さんは何%くらいでしょう。保育所は厚労省所管の児童福祉施設ですが、2014年度の同省『社会福祉施設等調査』によると、同年10月時点の認可保育所在所者数は223万552人となっています。同時点の0~5歳人口は627万4000人(総務省『人口推計年報』)。よって保育所在所率は35.6%、およそ3人に1人ということになります。

真正の待機児童数と厚労省発表の人数は桁違いのかい離がある

 残りの3分の2(404万3448人)は幼稚園児や在宅保育児ですが、認可の保育所入所がかなわなかった、真正の待機児童がかなり含まれると思われます。その比重を仮に1割とすると、真正の待機児童数は、404万3448人×0.1=40万4345人。むうう。厚労省発表の2014年4月1日の待機児童数(2万1371人)とはケタ違いです。

 これは乱暴な計算ですが、問題の深刻さを測る手段として、乳幼児の認可保育所在所率という単純な指標に注目するのもよいかと思います。0~5歳人口のうち、認可保育所に入れている子どもは何%か。2014年10月時点の全国値は35.6%ですが、都道府県別にみるとかなりのバラツキがあります。図1は、それを地図にしたものです。

日本海側は高く、都市部では低い保育所在所率

 最高は島根の61.9%、最低は埼玉の24.5%、違うものですねえ。濃い色は50%(半分)を超える県ですが、日本海沿岸は強い。共働き世帯率、子育て期の女性の正社員率が高いのもうなずけます。

 対して都市部の保育所在所率は低く、首都圏(1都3県)は見事に真っ白です。埼玉が24.5%、千葉が27.6%、東京が30.0%、神奈川が25.2%なり。幼稚園志向が強いのかもしれませんが、都市部における保育所不足の数値的な表現とみてもよいでしょう。われわれの肌感覚とも一致します。