保育所の定員を増やすことが子どもの命を救う

 あと一つの統計図をお見せしましょう。図2は、保育所在所率と乳幼児の虐待被害率の相関図でしたが、今度は、「子どもを保育所に預けやすい」と答えた親御さんの比率と虐待被害率の相関です。

 こちらもマイナスの相関ですが、「保育所に預けやすい」という親御さんの意識は、保育所に入れている子どもの比率よりも、虐待被害率と強く相関しています。相関係数は-0.4292で、1%水準で有意と判定されます。

 まあこれも、都市化のレベルを媒介にした疑似相関かもしれませんが、背後の真因を疑ってばかりというのは、あまり生産的ではありません。「保育所を広げることは、親を救うだけでなく、子どもの命も救う」(駒崎弘樹氏)という認識を、われわれは持たねばなりますまい。

 今回のデータを、以前に私の個人ブログで公開したところ、「議会質問に使わせてほしい」という依頼が数件寄せられました。保育所不足は子どもの生命をも脅かすことに気付きながらも、それを「見える化」できないで、歯がゆい思いをしている議員さんもおられるのだなと思いました。保育所の拡充を促す材料として、本記事の統計グラフを使っていただけるのなら本望です。

 冒頭の話に戻りますが、いくらでもいじれる「待機児童数」に安堵して、何の対策もとらない自治体もあると聞きます。私が考える、真正の待機児童数の計算式は以下です。

待機児童数=(0~5歳人口-保育所在所者数)×α

 このαをどう定めるかが問題ですが、育児という理由で就業できないでいる母親の割合などを充ててもよいでしょう。確か、総務省『就業構造基本調査』で、都道府県別の数値を計算できるんじゃなかったかな。

 これを基に、47都道府県別の「真正待機児童数」を試算できるかも……。うまくいったら、この場でも紹介しようと思います。