年明けすぐに実施された関西圏入試を皮切りに、東京・神奈川では2月1日~3日をピークに繰り広げられた2017年度の中学受験。2020年の大学入試改革を前に、中学入試にも変化が訪れるのではないかと予測されていましたが、果たして結果はどうだったのでしょうか? 男女御三家を中心とした難関校の入試問題の中身を、本連載でおなじみの西村則康先生に解説していただきました。

アクティブ・ラーニングは当たり前。難関校の入試問題は普遍なり

西村則康先生
西村則康先生

 2020年の大学入試改革に伴い、これからの中学・高校で身に付けるべき学力は、「知識重視」から「思考力」に変わると言われています。こうした中、中学入試においてもその影響が出ると予測されていましたが、「難関校は今まで通り。世間がやっと追いついただけ」と言わんばかりに、例年通りの難易度の高い問題が出題されました。

 西村先生はこう話します。

 「今、教育界ではアクティブ・ラーニングが注目されていますが、難関私立中学では、こうした言葉が世に浸透する前から既に『思考力』を重視した教育を行ってきました(詳しくは以前の記事「アクティブ・ラーニング 効果出るのは難関中学のみ」を参照)。ですから、2020年に大学入試が変わるからといって、中学入試の中身が大きく変わることはありませんでした。“開成”は“開成”、“麻布”は“麻布”と例年通り各校の特徴が表れた問題が出題されました」

 一方で、その影響が出た学校もありました。

 「市川学園といえば、首都圏の難関校を第一志望に考えている子たちの本番前の“お試し受験校”として人気の高い中高一貫の共学校ですが、その理科入試に変化がありました。アクティブ・ラーニング型の入試で長文の問題が出たのです。しかし、形式はアクティブ・ラーニングを意識していましたが、中身の変化は少なく、形式の変化だけという印象を受けました」

 「中学受験全体を見ても、アクティブ・ラーニング型の入試問題に変えているのは中堅校の一部と、またはそれ以下の学校が多く、難関校は例年通りです。英語入試の増加、2教科受験など、以前に比べて入試のスタイルが多様化していますが、それは生徒募集に苦戦している学校の“新たな切り札”としての意味合いも大きいのです」