同じ時期に入社しても、女性はすぐにアイドル扱いされ、出演者として大きな仕事を任されるようになるのだから、男性アナの心中は複雑なものがあるだろう。ここ数年は、女性司会者に若い「イケメンアナ」をアシスタントにつけたり、主婦受けするドジで可愛い新人男性アナも見かけるようになったけれど、数年でフリーになって活躍したり、お金持ちと結婚したりすることを考えると、まだまだ女性アナが有利だと見ることもできる。

男社会で女がやるから“オイシイ仕事”

 アナウンサーの場合は、組織の発表係であり「メインじゃなくてサブ」という、一般的には女性の役割とされることが多い仕事でもあるので、このようなことが起きる。女性アナウンサー同士で「これって男社会で女がやるからオイシイ仕事なのに、なんで男性に生まれてわざわざ局アナなんてするのかしら」と自虐かたがた言ったこともある。彼らは私たちみたいに「女子」を武器にできないのに、よく男社会の女役なんかをやるよね、と。それはすなわち、私たちは女という商品として扱われているんだよね、という嘆きの言葉でもあったのだが(ただし、職人技でもあるスポーツ実況の世界では、圧倒的に男性が有利である)。

 濃密な男性社会で、希少な女性という立場を最大限生かしきったところで土俵を移し、ジャンヌ・ダルクよろしくマッチョな男たちに戦いを挑み、最終的に彼らの上に君臨する立場を選んだ小池百合子氏のようにうまく立ち回れるならともかく(だから彼女の目には“誰も信じない”と書いてある)、女性が「男性と対等な女性」という建前を維持しつつ、歪な特権を運用するのは難しい。割り切って使っていても、いつかは利益が出なくなる。どこかで損切りしないといけないのだが、決心がつかないのだ