日経DUAL創刊時から、連載「ママ世代公募校長奮闘記」を執筆してきた大阪市立敷津小学校・元校長の山口照美さん。昨年4月からは、元民間人校長として公教育に関わる山口さん。そんな山口さんの言葉をストレートに伝える連載の8回目です! 

* 本連載の最後のページには、大人ではなく“お子さんに向けた”山口さんからのメッセージがあります。ぜひパパやママが声に出して読んであげてください。

「学ぶ力」は、大人にこそ必要

 28歳のときに会社を作った。未熟で思いつきで、最初の数年は予備校講師や下請けライターの仕事と並行しなければ食えないほど、稚拙なものだった。塾業界以外のことは何も知らず、読書やセミナーで学び続けた。実践を重ね、信頼を築き、安定した収入が得られても、学ぶことを止めるとIT社会の中ではあっという間に置いていかれる。中小企業向けの広報代行をメーンの業務にしていたため、クライアントの業種ごとに勉強が必要だった。当時の自分を、そして身近なプロフェッショナルたちを見ていて思う。

 「学ぶ力」は、大人にこそ必要だ。

 アメリカのロックバンドKISSを成功させたジーン・シモンズ氏が書いたビジネス書『KISSジーン・シモンズのミー・インク』を読んだことがある。堅実そのものの内容と、ロックスターのイメージとのギャップはともかく、突き付けられたこの一言にしびれた。

 「自分を教育しろ。大人の義務だ」

 子どもは大人が教育する。発達段階に応じた課題を与え、そこまで押し上げる。学びやすいように、支援もする。しかし、大人は自ら学ばなければ緩やかにダメになる。最近、学びのために読んだ本、出かけた場所、聴いた話を思い返してほしい。本を読むスピード、観察力、人の話を集中して聞く力のどれも、続けていないと圧倒的に力が落ちる。自分で自分を鍛えなければ、新たなことを学ぶときの「めんどくささのハードル」は上がる一方だ。

 「学ぶ力」があることは、職や時代が変わっても大丈夫という自信をくれる。自営業から学校現場に行ったときも、質問をし、メモを取り、本を読み、観察し、全身をアンテナにして学び続けた。この一年も、新たな部署で世界を広げている。