1週間の海外出張からヨメが戻った後、一本の電話が……
ヨメが1週間の海外出張に出かけている間、虎(息子・仮称)に変化はほとんどなかった。
ひょっとしたら4歳児なりに精一杯の虚勢というか、「ママがいなくてもぼくだいじょぶだよ」的なポーズをとっていたのかもしれないが、体調を崩したり、食が細くなったり、あと、環境が変わるとなりがちだった便秘に悩まされることもなかった。
だが、ヨメの帰国後、我が家に何の変化もなかったわけではない。
ヨメのインフルエンザが無事に治り、親子3人+じいじ、ばあばと出席した幼稚園の発表会が終わった日の午後だった。
滅多にならないリビングの電話が鳴った。
嫌な予感がした。
「お世話になっております。〇〇動物病院の〇〇と申しますが」
予感は、当たった。
「お預かりしていたむくちゃんですが、先程、呼吸が停止してしまいまして――」
虎がこの世に生を受けるまで、我が家の中心には常に犬がいた。ワイヤーヘアード・ミニチュアダックスフントのまくら、むく、はる。テリアのようにお髭がもしゃっとした風貌をした3匹のダックスフントは、わたしたちがどこへ行く時も一緒だった。
というか、なかなか子どもができなかったカネコ家にとっては、3匹こそが子どもだった。家を建てた時は、建築家にお願いして腰を痛めやすいダックスに優しいフローリングにしてもらったし、犬用のトイレ、シャワーなどもあらかじめ作っておいてもらった。作家の馳星周さんから「お前んちの犬、甘やかされすぎ! まるでしつけがなってない!」とお叱りの言葉を受けたこともあったが、わたしもヨメも、改める気は実はなかった。
まくらも、むくも、はるも、みんな愛らしすぎて。
ただ、虎が生まれてから状況は変わった。