グローバル化が進む激動の時代―。性別や国籍だけにとどまらない「多様性」が注目されています。「多様性」は、どんな効果をもたらすのでしょうか。多様な人材の成長と活躍推進に取り組む、みずほ銀行の林 信秀頭取と、新しい価値観を生み出すチェンジメーカーの育成を教育理念とするISAK(アイザック)の小林りんさんに、日経BPヒット総合研究所長 麓 幸子が話を聞きました。

「人材」こそが最大の資産。育て、支え、成長に貢献し合う会社と社員の好循環

―(麓 幸子、以下同)みずほ銀行は多様な人材の活躍推進に積極的に取り組んでいますが、企業に今求められることはどんなことでしょうか。

「常に成長と挑戦を続ける強い「個」こそが企業を変える」(林頭取)
「常に成長と挑戦を続ける強い「個」こそが企業を変える」(林頭取)

 圧倒的なスピードで技術革新が進む現代において、画一的・単一的な発想しかできない企業はもはや生き残れません。世界市場で戦うには、最大の資産といえる人材を育て、支え、会社も社員も互いの成長に貢献し合う好循環をつくり出すことが重要です。また、多様な社員のアイデアや意見を日々の業務にも取り入れることで、イノベーションや新たな価値創造につながると考えています。

―そのための、みずほ銀行の取り組みを教えてください。

 現在推進している人事運営の抜本的改革では、「全社員が活躍する」「絶えず成長する」「能力を100%発揮する」「長く活躍する」という4つのキーワードを核に、雇用形態や国籍、年齢などに関係なく、誰もが自身の成長を体感しながら活躍できる体制を構築中です。たとえば産休や育休、介護などのライフイベントは、男女ともに主体的に関わるべきもの。仕事とプライベートを両立できる枠組みをつくることが、有為な人材を離脱させない秘訣です。職場の意識改革のため、男性の育休100%取得へ向け、取得期間延長制度や介護離職ゼロを実現させるために最大3年の休暇・休業を取得できる制度を整えるなど、持続的に続けていけるよう取り組んでいます。

小林 男性の育休100%取得とは、大変先進的な取り組みですね。人事改革は「言うは易く、行うは難し」という面もあるなかで、多大なコストをかけても改革の先陣を切ろうという心意気に感嘆しました。

「自分の強みは何か、突き動かすものは何か?問い続けることで何かが動きだす」(小林さん)
「自分の強みは何か、突き動かすものは何か?問い続けることで何かが動きだす」(小林さん)

 一人ひとりが生産性を上げられる環境をつくれば、やみくもに人を増やすよりはるかに低コストなのです。今や、当行の業務純益の約4割は海外におけるものです。女性CEOが珍しくない欧米企業のように、男女の別なく意欲や能力のある人が率いる組織になるべきで、日本だけが異質であってはなりません。そのための仕組みづくりにかけるのは、コストではなく投資と考えています。

―誰もが働きやすい仕組みづくりについて、もう少し詳しく教えていただけますか。

 たとえば現在、当行では産休・育休を取得している社員は約1000人おり、全体の1割以上に及びます。一方で復職への不安の声もあります。そこで、多様な働き方の実現に向けた取り組みのひとつとしてペーパーレス化を推進し、全社員にタブレット端末を配布しました。スムーズなモバイルワークを実現できますし、休暇取得者も常に会社とアクセスできるので、復職時の心の負担を減らせます。

小林 キャッチアップ体制が整っていることは、特にライフイベントが集中しがちな女性にとっても魅力的ですね。

 そうですね。これからは、女性に限らず男性も、自分の考えやライフイベントに合わせて働き、かつ、しっかりと生産性を上げられる環境を実現しなければなりません。