社内託児所から始まった「南青山たんぽぽ保育所」
株式会社ハセガワエスティは現在、ブライダル司会・演出業の最大手として年間1万8000件以上の映像・音響プロデュースを手掛けるだけでなく、婚活エージェントや海外ブランドコスメの輸入販売業など6つのグループ会社を有しています。その事業内容の一つには認可外保育園「南青山たんぽぽ保育所」の運営も。
この保育園はもともと司会業として需要のピークを迎える30~40代の女性社員が結婚、出産してもなお、仕事を続けられるように、福利厚生として社内完備されていた小さな施設が始まりだったとか。阿久津さん自身、事業拡大を推進してきた経営者であると同時に三児の母であることから「結婚しても子どもができても仕事は手放してはもったいない」と常々社員に言い聞かせているといいます。
「仕事から長く離れると、司会者としてのリズムや勘が鈍ってしまうんです。月1本でもこなし続けることで仕事を辞めなくてもいいように」と、後輩たちが行き先を選べる道を用意したいと阿久津さんは考え、社内託児所を始めることに。
やがて子宝事務所と呼ばれるほど働くママが増え、手狭になった社内託児所を社外に移し、保育所を完備。規模が小さいため、認可外ではあるものの、今では同社の社員の福利厚生施設として役割を果たすだけではなく、地域の働くママたちの利用も増え、常に予約待ちの状態が続いているといいます。「保育所経営を事業にしたのは、子育てだけでなく、キャリアとの両立の必要性を阿久津さん自身が経験上、感じたからですか?」と尋ねると、「全然そんなことはないんです。ただ、人生80年時代の今、うっかり仕事を辞めてしまうと、老後に困るでしょう? それだけの理由です」と笑いながら即答。
何でも大好きな作家、遠藤周作の影響もあって「人間は死ぬときが大事」だという終末思想のようなものが阿久津さんの人生設計の根底にあるのだそうです。
「子育ての期間は長いようで、案外短いものです。子どもが親の手を離れてからの人生のほうが長いんですから! せっかく仕事を続けるなら自分が得意な仕事のほうが幸せですよね? 育児を理由に仕事にブランクができてしまうと、復帰するのもなかなか難しい。そんな理由で好きな仕事を諦めなくてすむように、一時期はお給料の半分が保育費に消えたとしても、それは未来の自分への投資だと思って仕事は続けてほしいんです」