小学校高学年くらいになると思春期が始まり、子どもの心と体は大人になる準備を始めます。その変化は個人差が大きいために、周囲と比べて不安になったり、急激な変化に戸惑ったりすることも。思春期を迎えるに当たって、親はどのような準備やサポートができるでしょうか。医師や専門家に、性別ごとの体の変化や最低限押さえておきたいポイントを聞きました。今回は、身長の悩みと低身長の基礎知識についてお届けします。

 【小学校高学年のママ・パパ/病気・ストレス・体】
(1) 胸が膨み始めたら備えを 初潮の前に子へ伝えること
(2) 思春期 ファーストブラ選びと異性の家族への配慮
(3) 男女に約2歳の差 思春期の息子の“反抗”と“性”
(4) 男児の身長のピークと低身長 早熟過ぎも要注意 ←今回はココ

 子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

身長が伸びる時期と最終身長の基礎知識

神奈川県立こども医療センター 内分泌代謝科科長で日本小児内分泌学会理事を務める室谷浩二先生
神奈川県立こども医療センター 内分泌代謝科科長で日本小児内分泌学会理事を務める室谷浩二先生

 男性に比較的多い「背が低い」というコンプレックス。現在は価値観が多様化し、外見で優劣を付けられるのはナンセンス!とはいうものの、子を思う親としては、やはり理性では昇華しきれない切実な悩みとなる場合もあります。今回は、身長の伸びのメカニズムと「低身長」について、引き続き、神奈川県立こども医療センター内分泌代謝科科長の室谷浩二先生にお聞きしました。

 「身長の伸びるピークは、人生に2回ほど。1度目が生まれてから1歳ごろまでの時期、2度目が思春期の時期です」と解説する室谷先生。

 「男の子の2度目のピーク(身長スパート)がいつ訪れるかというと、平均で中1の13歳ごろ。1年間に約10cm伸びます。ただし、早熟な子は2年くらい早く11歳で身長の伸びるピーク(身長スパート)を迎えますし、おくて体質の子は15歳くらいでピークを迎えるわけです。男の子は3歳ごろから思春期に入るまで、年間5~6cmくらいの成長率で伸びますが、身長スパート期(身長がよく伸びる時期)には10cmペース、つまり2年分伸びます。思春期のスタート時期が遅いと必然的に1年で約5cmの差が付くわけで、そこで周りと比べて大きな精神的なコンプレックスを抱える原因となり得ます。『身長がよく伸びる時期は思春期の始まりと関係していて、個人差が大きい』ということをまず知っておきましょう」

 「人生のうちで身長が伸びる時期は、生まれてから思春期が終わるまで。身長の伸びのラストスパートともいえる思春期が終わると、その後の身長の伸びはほとんど期待できません。例えば、大人になったときの身長の平均が、男性は171cm。思春期の始まりの平均である11歳ごろの平均身長は145cmで、その差は26cm。あくまでも平均なので、伸びる人はまれに40cmくらい伸びますし、伸びない人は20cmもいかないということもあります。思春期が始まる時期や両親の体格等の情報によってある程度の予測を立てることはできますが、その子が最終的にどれくらい伸びるかということを思春期の始まる前に正確に予測することはできないのです

【男子/0~18歳】縦断的標準身長・成長率

神奈川県立こども医療センター内分泌代謝科 室谷浩二先生作図
神奈川県立こども医療センター内分泌代謝科 室谷浩二先生作図

【男子】思春期の体の変化

大阪府立母子保健総合医療センター消化器・内分泌科 位田忍先生作図
大阪府立母子保健総合医療センター消化器・内分泌科 位田忍先生作図

 身長は偏差値と同じように山型で左右に正規分布しており、標準の身長は2000年度の「乳幼児身体発育調査」と同年度の「学校保健統計調査」の身体計測値を基に決められています。平均身長からどれくらい隔たっているかによって、高いほうへ+1SD、+2SD、低いほうへ-1SD、-2SDがあり、-2.0SDより低い層が、集団と比較した場合の「低身長」ということになります。

 「標準身長曲線は基準となる線ですので、これまでの成長データをプロットしたり、親御さんの体格と比較したりして、今の身長が妥当かどうか。私たち医師はそういうことも含めて評価することになります」と室谷先生。体質の個人差により「ゆっくり大人になる」子もいるとはいっても、本人や親の悩みが深い場合も。

 「乳幼児健診や保育園・小学校等の定期健診で低身長の可能性を指摘されたり、身長の伸び具合が心配になったりした場合は、早めに総合病院の小児科や小児内分泌の専門医がいる病院を受診し診療を受けましょう。病院へ行き始めたら、これまでに伸びてきた成長の記録に加えて、定期的に身長・体重を測っていきます。そういった経過を見ておおよその成長コースの予測を立てながら、必要があれば詳細な検査や治療を考えていくことになります」

 次のページからは、低身長の原因や治療法について、さらに詳しく聞いていきます。

<次ページからの内容>
・食事・運動・睡眠 基本的な生活習慣を整えることが大事
・治療は本人の納得が大切 長所を伸ばし人生を歩む
・(参考資料)【女子/0~18歳】縦断的標準身長・成長率、【女子】思春期の体の変化