解決策その1 認可制から指定制へ

 現在、保育所は基礎自治体が供給量を決定する仕組みです。今年度は1000人分保育園をつくろう。だから、10の事業者を選定するために、公募をかけよう。11社きても、ダメだからね。という仕組みです。

 言い方を変えると、保育園を自治体が「配給」する仕組みです。パン屋さんだったら、行きたいパン屋さんを選んでパン屋さんとお客さんの間だけでやりとりしますが、保育園はそこに自治体が挟まれ、自治体がお客さんの希望を聞き、サービスを届けます。しかし、自治体自体がブレーキをかけている(あるいはかけざるを得ない)状況では、これでは機能しません。

 よって、介護や障害児の通所サービスで導入されている、「指定制」に切り替えます。

 指定制においては、自治体は供給量の意思決定と、供給業務にはタッチしません。事業者が、ニーズを見定めて参入し、成り立たなさそうだったら、参入しない、という市場的なメカニズムで供給が決定されます。事業者と保護者との間の直接のやりとりになります。

 ただ、ここで勘違いされやすく、しばしば極端な規制緩和論者の方が忘れがちなのは、とはいえ保育園は福祉でもあるので、完全なるビジネスであっては、貧富の差が広がってしまうので、きちんと税による補助は投入されるべき、ということです。介護も障害児のデイサービスでも、利用者の負担は部分的で、支払い能力によって負担が調整され、安価に利用できます。

 実は2015年度から開始した「子ども子育て新制度」の制度設計時点においては、当初は指定制の導入が検討されていました。
 http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/review/wg/youho/k_3/pdf/s2.pdf

 そして途中まで、指定制にしていこう、と議論が進んでいたのです。

 しかし、当時の野党自民党内に、自治体が強く関与して供給量と質をコントロールできる認可制を支持する議員の方々がおり、与野党の政治的折衝の中で認可制がそのまま生きることになったという背景があります。

指定制は既に一部で実施

 ただ、実は既にこの指定制に限りなく近いものは、つい最近、ひっそり保育園制度の中に一部取り入れられることになり、始まっています。それが、昨年度から始まった「企業主導型保育」です。

 企業主導型保育は、名前がミスリーディングで、企業しか運営できないような印象を受けるのですが、実施主体はNPOでも社会福祉法人でも大丈夫です。自治体主導で配給する仕組みではなく、事業者が主導して、自らの従業員や地域の人たちに向けて保育を行う、と理解してもらえたら良いでしょう。

 この企業主導型は、以下の点で非常に開園しやすくなっています。

(1) 初期費用・運営費用ともに認可保育所並みの補助が出る
(2) 自治体の公募に関係なく、自分で物件押さえて申し込めば、基本的に開園承認される
(3) 自治体を介さず、保護者の方々と直接やりとりをする

 内閣府は既存の認可保育所制度をいじることができなかったため、事業主拠出金を原資に、認可保育所制度とは別のルートにおいて指定制を実現し、供給量改革を狙っている、ということが見て取れます。

 企業主導型は、指定制であることが大きく作用し、現在大きく開園数を伸ばしています。

 ■出典:SankeiBiz 「企業主導型保育所、全国100カ所に新設 日生とニチイ学館、4月から共同

 こうした指定制が実現した場合、自治体は供給の主体ではなく、「保育の質の管理」を主要なお仕事にシフトしていくべきです。現在、膨大な量の書類を開園前は提出しますが、開園してからはロクなチェックもしておらず、ブラック保育園を跋扈させる状況となっているためです。