夫婦は共に働き、共に育児や家事をする――。この意識は、ここ何年かで若い世代を中心に随分と普及したのではないでしょうか。なのに、子育て世代がモヤモヤを抱えたままなのは、取り巻くルールが旧時代のままだから? この連載では、親になったからと受け身にならず、前向きに自分の人生を切り開こうとしている人を紹介していきます。一人一人の小さな変革でも、社会を変えるうねりになるかもしれません。
 前回に引き続き、国際会議ディレクターとして働く一児のママ、大友眞生さんを紹介します。大友さんも2年前の育休復帰直後は、出産前と同じ働き方をしようとして壁にぶつかっていました。

■前回の記事 「育休復帰に当たり『在宅勤務』を社内で制度化」

今回のDUALなヒロイン

大友眞生(おおとも・まい)さん。40歳。東京都文京区で、2歳の息子と夫との3人暮らし。2014年1月~15年3月まで産休・育休を取得し、2015年4月から復帰。

日本コンベンションサービスに勤める、国際会議ディレクター。各国の首脳がそろう会議や学会、シンポジウムなど、様々な国際的なイベントの企画から日程や会場手配、通訳翻訳業務の調整、プログラム内容から制作物の作成、当日の設営までプロデュースする。大友さん自身は、COP10(生物多様性条約第10回締約国会議、2010年10月)、G7広島外相会合(2016年4月)、WAW!2016(国際女性会議、2016年12月)など、60件以上の会議運営に携わる。

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 出産する前から、部内でチームマネジャーの立場にいました。でも、仕事は自分でやるほうが好きでした。プロジェクト単位の業務がそれぞれ同時並行していくのですが、チーム体制は今のような3~4人ではなく、たった2人で回し、私が主導していました。一部を任せるにしてもそのためには説明する時間が必要だし、だったら自分でやったほうが早いし、クオリティーを管理できるので…と、ほとんど自分でやっていたんです。

子連れで神戸出張を敢行。実母を札幌から呼び寄せる

 各国の首脳が集まるような大型のコンベンションを任されていたので、産休・育休前は、「私が1年以上休んで大丈夫? 部の仕事を回せる?」なんておこがましくも思っていました。でも実際に休んでみると、不在なら不在なりになんとかなるし、問題も起きないことを目の当たりにしたわけですが(笑)。

 そんな育休前までに培ってきた自負もあり、育休が明けてすぐのころは、以前の仕事のやり方と同じようにしようとしていました

 当然ながら、絶対的な時間が減っているのに回せるわけがなく、息子は息子で慣れない集団生活で熱を出し、その都度私は職場で迷惑をかけてしまうことに心を砕き、肉体的にもハード過ぎて当時の記憶がないほどに追い込まれていました。

 「できるだけ自分でやりたい」というのは家事・育児においてもあったんです。復帰して3カ月足らずのころ、神戸に1週間出張することになったとき、出張先に息子を連れて行きました。息子が1歳3カ月のときで夜間は授乳していたし、育児能力がそれほど高くなかった当時の夫に任せるのも不安で…。息子を残して出張先に行くことができませんでした。

「WAW!2016」の会場にて。運営中のスタッフとの打ち合わせ
「WAW!2016」の会場にて。運営中のスタッフとの打ち合わせ