子育て世代に起こりやすいトラブルの実例とその対処法を、弁護士法人・響の徳原聖雨弁護士に伺う人気企画。第10回は、妊娠・出産などにまつわる会社でのマハタラや、セクハラなどの問題です。実際に読者の皆さんから寄せられた身近な困り事に弁護士さんが解決法をアドバイスしてくれました。

 CASE1 妊娠がきっかけで降格された。これって違法では?

Q. 先日、念願の子どもを授かり、会社に妊娠した旨を告げたところ、役職を降格(課長から降格)させられました。私は、妊娠後も出産する直前まで仕事を続けるつもりですし、出産後、復職も考えています。多少は休みがちになる期間もある可能性もありますが、いきなりの降格は違法ではないでしょうか? どうしたらいいですか?

A. 今回のご相談内容は、いわゆる「マタハラ」の問題だと思います。マタハラ、すなわちマタニティ・ハラスメントとは妊娠・出産・育児休業の取得を契機として、会社が従業員に対して解雇・雇い止め・降格・減給などの不利益な取扱をすることをいいます。そのような取り扱いは男女雇用機会均等法という法律にて禁止されています。

 ご相談者様のおっしゃるとおり、妊娠を会社に告げた後に突然降格になったということは、他に降格になるような事情がないのであれば、妊娠を理由に不利益な取り扱いを受けたといえます。となると、男女雇用機会均等法第9条3項に違反しているということになります。そこで会社に対して損害賠償請求をするか、場合によっては行政指導をしてもらうといったことも考えられます。

 マタハラ問題については、つい最近最高裁判所にてある判決が出されました。その判決では「女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は、原則として同項の禁止する取扱に当たるものと解される」としています。すなわち妊娠を理由に降格させるような措置は、原則として男女雇用機会均等法に違反するということを示しています。しかし、判決中では違反とならないような例外的な場合が2点示されました。

①業務上の必要性から不利益な取り扱いをせざるを得ず、業務上の必要性が不利益な取り扱いにより受ける影響を上回るといえる場合

②労働者が不利益な取り扱いに同意している場合で、一般的な労働者であれば同意するといえるような合理的な理由が客観的に存在する場合

です。どちらもよくわからないですよね。

 例えば妊娠したことを契機に、負担の少ない業務に変えることを本人が希望しており、その希望に沿うためには降格のような不利益な取り扱いがなされることや、それによって給与が下がるなどの不利益があること等を十分に理解して同意した場合には、もしかすれば例外の②に該当する可能性があります。そうすると、損害賠償請求や行政指導といった話にはなりません。

 お聞きしているかぎりのご相談内容からすれば、最高裁判所が示した例外にあたるようなご事情がうかがえませんので、違法といえるのではないかと思います。

仮に、仕事のできが悪かったからだと会社に言われたとしても、単なる言い訳の可能性もあります。その場合は、会社側から客観的な証拠の提出を求めたりしましょう。

以上を踏まえ、今までの経緯を整理し、弁護士に相談されてみてください。