営業職に就いたのはセクハラという言葉すらない時代
LIXILジャパンカンパニーの山中雅恵さんは、4歳の子どもを育てるワーママだ。住宅に関連するあらゆるカテゴリーの商材・サービスを幅広く扱うこの会社で、売り上げ貢献が950億円にもなる特需開発事業部の事業部長を務める。一方で営業職、マネジメント、女性リーダーのプロフェッショナルとして様々な講演にも登壇。また日本IBMでの活躍や、マイクロソフト時代の執行役員としての手腕はメディアでも紹介されてきているので、名前をご存じの方も多いかもしれない。
「私はいつでもどこでも、“珍獣”ですから」と笑う山中さんだが、軽やかに語るその華やかなたたずまい、そして経歴の裏には想像を絶する経験がある。
なにしろ山中さんが営業職で就職したのは「男女雇用機会均等法」が制定された2年後。同法は2017年初めに「妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする不利益取扱い・防止措置」が盛り込まれ話題になったが、当時は出来たてほやほやで、マタハラ(マタニティーハラスメント)どころかセクハラ(セクシャルハラスメント)という言葉もない時代。同期は約1600人いたが女性は約300人で、そのうち営業職の女性はほんの10人ほどしかおらず、しかも山中さんは大手法人担当営業としては女性第一号だったという。
今も営業先が大手法人企業となると、女性が少ない世界。ましてやマネジメント職に就く女性は微々たるもので、そうした意味でも「珍獣」だと山中さんは自認する。
40歳/社内で女性営業部長はたった2人!? 5年間目標未達成部署を1年で回復
日本IBMに限らず当時の営業は根っからの“男社会”。酒席を設けた接待も普通のことで、営業先の担当者と打ち解けるのさえ難しく、「交換日記を提案したこともありました」と山中さんは振り返る。
「営業は恋患いになる状態」という山中さんは、営業先の会社のためになることを誰より真剣に考えた。そのうえで、「営業とは先手を打つことであり、その先手を意識して立てた計画を必ず実行すること」だと思った山中さんは、選ばれ続けるために自らの実行力を高めたという。
「年間計画書や目標を毎年提出する会社は多いと思いますが、そうしたものの多くは素晴らしいプランであっても、実行できるのは半分がいいところだったりしますよね。私は、それを100点に近くするためにはどうしたらいいのかを考え抜きました」
まず年間計画書を作り、それを半期、四半期、さらにマンスリープランに振り分けていく。それをウイークリーマストDoにさらに細かく落としたうえで、最後に毎日のToDoリストにまで落とし込む。そして、そのToDoリストを実行していく。この1日のToDoリストのうち最低でも3分の1は、“その日にやるタスク(マストDo)”ではない、“先手を打つためのToDo”を入れるのだという。
この年間計画書は自分のためだけに作るのではなく、客先に向けても作り、提案する。計画書は年に1度、提案するのではなく、作った計画書を基にさらに月間計画に落とし込み、客先のキーマンに「今月はこれをやります」と宣言。翌月には新しい月間計画とともに前月の評価もしてもらう。ぎっしり書かれた立体的な行動管理術ノート、そして相手を思う気持ちで挑む姿勢が功を奏し、年数十億円の契約を獲得するようになり、女性で初めてのトップセールスを獲得する。
「お客様のためになるから、結果として数字がもらえる。その醍醐味と楽しさを味わってほしい」と考えていた山中さんは入社から18年後、約13人の部署の部長になる。当時、営業部長を務める女性は山中さん含めて2人だけという状態だったので、部署の全員が男性で、半分以上が年上というのは想定内だった。ただ想定外だったのが、それまで所属してきた部署とは異なる領域の部署だったことと、何よりその営業部の業績だ。20四半期(5年間)、一度も営業成績目標を達成していなかったのだ。
それまで高い営業成績を挙げ続けてきた山中さんにとっては「目が点になりました」という状態だったが、しかし1年後には目標を達成させてしまう。
次ページから読める内容
- 目標を達成しながら6人が部署異動した理由
- 業績が落ちるのは自分の責任
- 世の中のためになるかどうかを優先する
- “珍獣”だからこそ噂になりやすい面も
- 1年365日、24時間をいかに効率よく回していくか
- 女性が増えればダイバーシティーなわけではない
- ゴールを見据えたときに自分はどう振る舞えばいいのか
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