皆さん、こんにちは。株式会社子育て支援の代表取締役、熊野英一です。

 私は今、昨年の4月に出版した『アドラー 子育て・親育てシリーズ 第1巻 育自の教科書 ~父母が学べば、子どもは伸びる~』(アルテ刊)に続くシリーズ第2巻『家族の教科書 ~子どもの人格は、家族がつくる~(仮題)』の執筆を進めています。この新刊のテーマでもある「家族のあり方」が子どもの人格形成に与える影響について、前回に引き続き、アドラー心理学の見地をご紹介していきたいと思います。

 前回は「家族のあり方」のうち、親の価値観や家族の雰囲気が子どもの人格形成に与える影響を見ていきました。今回は子どもの人格形成を左右する「きょうだい関係・誕生順位」について、私がアドラー心理学のカウンセリング技法を学んだテキスト(アドラー心理学教科書/ヒューマン・ギルド出版部)をベースに、考察を進めていきます。

私たちは皆、自分自身の人生の脚本家であり、主役である

 アドラー心理学では、一般的に人格とか性格と呼ぶものを「ライフスタイル」といいます。前回、私たちはおおむね10歳くらいまでに、自分自身の人生の基本設計図、ガイドマップの役割を果たす「ライフスタイル」を確定していくという考え方をご紹介しました。

 子どもは、母親や父親、きょうだい姉妹、祖父母や親戚、保育園・幼稚園・学校の先生やお友達といった周囲の人々との人間関係に対処していくため、生まれてから少しずつ、少しずつ、その子なりのスタイルを形成していきます。新しい人に出会うたび、スタイルを選び直していくのは大変なものです。そこで私たちは、ある程度の年齢になると(この時期がおおむね10歳くらいといわれています)、時に「このスタイルだと快適ではないな」と思うことがあっても、なれ親しんでしまった思考のクセ・行動のパターンから逸脱することには不安が伴うことから、「どんなときでも自分はこのスタイルでいこう」と「変わらない努力」を始めるのです。

 例を挙げると、このような感じでしょうか。

私は、自分の感情を素直に表現しないようにすることで、他者とのあつれきを避けようとするクセ(ライフスタイル)がある

 このクセを治したいとも思うのだけれど、もし自分の感情を素直に表現したら、他者はどのように反応するだろう? と考えると、不安になる

だから、結局のところ、いつも人の顔色をうかがって、心のうちの感情を見せないように、気づかれないようにと、努力している

 以上の例から、ライフスタイルについて次の二つのことが見えてきます。

1) ライフスタイルは、本人が、主体的に選択している
2) ライフスタイルの形成は、他者からの影響を受ける

 ライフスタイル形成に影響する因子は、前回も紹介した下表のとおり、遺伝や親からの影響もありますが、今回は、これらの影響因子のうち、きょうだい関係や誕生順位について深く考えていきたいと思います。