人工乳房再建手術に保険が適用、全摘する人が増える

―― がんが見つかったら、どんな治療がありますか。

中村 治療は、手術や放射線、薬物を組み合わせて進めます。生検で、どのような治療が有効ながんかある程度分かります。薬物にはホルモン剤、ハーセプチンなどの分子標的薬、抗がん剤があります。抗がん剤と分子標的薬を組み合わせてがんを小さくしてから手術したり、ホルモン療法と抗がん剤を組み合わせたりします。抗がん剤しか効かないタイプのがんもあります。

 手術には、部分切除と全摘の切除があり、全摘した後に乳房の再建手術を受ける患者さんもいます。2013年から、人工乳房再建手術に保険が適用され、自費で100万円単位でかかっていたのが、自己負担が少なくなりました。以前は、乳房を残せるか残せないかが大きなポイントで、無理に温存するケースもありました。温存が6~7割で残りは全摘だったのが、保険が適用されてから、その割合が逆転しつつあります。

―― 再建手術について教えてください。

中村 再建は、手術で失われた乳房をもとの形に近づける手術です。自分のお腹などの組織を使う方法と、シリコンインプラントなど人工のものを入れる手術があり、シリコンを選ぶ患者さんが多い。乳頭と乳輪を残した場合は、乳房の切除と同時にシリコンを入れます。乳頭と乳輪を切除した場合は、エキスパンダーと呼ばれる組織拡張器を入れ、食塩水を少しずつ入れて皮膚を伸ばし、半年から1年後にシリコンでできた人工乳房を挿入します。シリコンは、左右の形を近づけるのが難しかったり、入れ替えが必要になったりというデメリットもあります。

 放射線治療をしてから再建手術をする場合、皮膚が伸びにくい、感染に弱いなどのリスクがあります。乳輪や乳頭を切除したら、これも人工のものか、自分の組織で作ることができます。シリコン製のものは、接着剤で貼り付けます。こうした再建の手術には、乳腺外科と形成外科の協力が欠かせません。教育セミナーを開いて技術を磨いています。