子育て中の忙しいときこそママも自分の健康管理に気を付けたいもの。子育て真っ最中のママが気を付けたい病気シリーズ、前回はタレント・生稲晃子さんの乳がん体験を2回にわたって紹介しました。今回は、昭和大学ブレストセンター長の中村清吾教授に乳がんの基本的な情報や治療法について聞きました。

35歳以上で増え、40代後半~50代後半が発症のピーク

―― 乳がんの患者はどのぐらいいるのでしょうか。

<span style="font-weight: bold;">中村清吾</span>(なかむら・せいご) 1956年生まれ。千葉大学医学部卒業。2005年、聖路加国際病院でブレストセンターを立ち上げる。現在は昭和大学病院ブレストセンター長、同大医学部乳腺外科の教授。日本乳癌学会理事長。患者団体やNPOの活動にも協力している
中村清吾(なかむら・せいご) 1956年生まれ。千葉大学医学部卒業。2005年、聖路加国際病院でブレストセンターを立ち上げる。現在は昭和大学病院ブレストセンター長、同大医学部乳腺外科の教授。日本乳癌学会理事長。患者団体やNPOの活動にも協力している

中村清吾教授(以下、敬称略) 国の研究機関の推定値を見ると、年間に約9万人が診断されています。1985年には約2万人だったので、4倍以上に増えました。栄養状態がよくなり、女性の初潮が早く、閉経の年齢は高くなって、月経の回数が多いことが関係します。月経があると排卵期に女性ホルモンの分泌が高くなり、その刺激で乳がんが活発になるからです。昔なら、15~45歳ぐらいの間に、5人、10人と出産する人もいました。その間は月経が止まり、乳腺を刺激しません。出産や授乳の経験がある人は、乳がんにかかるリスクが低くなると言えます。

 20代の患者さんもまれにいますが、35歳以上で増え、40代後半から50代後半が発症のなだらかなピークになっています。発症数に比べて、亡くなるケースはわずかに増えている程度で、年におよそ1万3千人。他のがんよりは治療しやすいですが、対策は必要です。

―― どんな人が、リスクが高いのでしょうか。

中村 初潮が早い、閉経が遅い、月経の周期が短い、出産や授乳を経験していない、または高齢出産をした人。肥満や、ホルモン補充療法を長期間した人などです。女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが遺伝のリスクを考え、乳房を切除して話題になりましたが、同じ家系に複数の乳がん患者がいる、男性の乳がん患者がいる、両側の乳房にがんが見つかった人などは遺伝性の可能性があります。遺伝カウンセリングという仕組みもあり、血液で調べられます。

 こうしたリスクがある人は、注意して検診を受けましょう。通常、日本では40歳以上になって2年に1回の検診を勧められますが、遺伝性のリスクのある人は25歳から検診をスタートするといいですね。海外の先進国では、リスクの計算式があり、遺伝子検査にも保険が適用され、一律に検診を受けるのでなくリスクが高い人が検診を受けます」