仕事も、子どもも、愛している――。そんなマルチタスクで両立をがんばるDUALな皆さん、自分や同期が「ママリーダー」になる機会が最近増えていませんか? 日経DUALでは「ママリーダーの“チーム術” 」を特集します! 組織で活躍するママリーダーたちはどのように悩みや壁を乗り越え、自分なりの「リーダー術/チーム術」を見出したのか、その経験やノウハウを惜しみなく教えてもらいます。
特集のオープニングでは、昭和女子大学総長・理事長の坂東眞理子さんが日経DUAL編集長 羽生祥子と対談。新著『女性リーダー4.0 新時代のキャリア術』(毎日新聞出版)では「いい子」から脱皮して「いいリーダー」になろうと鼓舞します。後編では、坂東さんの豊富な経験に基づく上手な部下の叱り方・育て方、トラブル対処のアドバイス、そして2人のお嬢さんについてお聞きします。

【ママリーダーの「チーム術」特集】
第1回(上) 坂東眞理子さん直伝!「脱いい子」で新リーダー像
第1回(下) 坂東眞理子 上手な部下の叱り方、トラブル対処術 ←今回はココ
第2回 理想は「ナウシカ」の変革 ネットマーケのイクボス
第3回 自分の常識は他人の非常識と心得た 時短勤務ボス
第4回 先手打ち防御も学んだ LIXIL営業事業部長ママ
第5回 「見える化」で思いを実績に変えた 金融大手イクボス
第6回 ハーバード流の女性経営者育成に62社が参加

坂東 眞理子 昭和女子大学総長・理事長。1946年、富山県生まれ。東京大学卒業。1969年、総理府入省。内閣広報室参事官、男女共同参画室長を経て、1995年埼玉県副知事、1998年総領事(オーストラリア・ブリスベン)。2001年、内閣府初代男女共同参画局長。2004年、昭和女子大学教授、同大学女性文化研究所所長、2007年より同大学学長(2016年3月まで)。2014年より理事長(学長兼務)、2016年に総長(理事長兼務)となる。新著に「女性リーダー4.0 新時代のキャリア術」(毎日新聞出版)。2人の娘はともにワーキングマザーとして奮闘中


 

 部下を育てる・叱るは、子育てに通じる


羽生編集長(以下、――) 女性管理職ならではの、部下を叱るときに気をつけなければいけないことはありますか?

坂東眞理子学長(以下、坂東) 「ちょっとひと呼吸おく」ということです。私は自分をコントロールするというのは、女性がリーダーとして生きていくうえで、とても重要だと思いますね。叱るときも、本当に腹が立って怒り狂っているときは叱ることはできないのよね。その怒りがちょっとおさまったときに叱ったほうがずっと効果的です。

―― 叱るときには厳しく、でしょうか。

坂東 感情的にならずに、冷静に厳しく、です。

―― 本当に育児みたいですね。

坂東 育児だと相手は子どもですからその場で怒らないとだめなときもあります。でも部下は大人ですから、3日経ってから怒ったほうがいいですよ。他人だし、「親しき仲にも礼儀あり」ということです。

―― 叱る場所も配慮が必要でしょうか?

坂東 人前は避けたほうがいいですね。褒めるときは人が見ているところで褒めたほうが効果があるけれど。叱るときは相手のメンツを考えて1対1のほうがいい。できれば口頭で、直接叱る。ネガティブな話は文章やメールのように読み返すような形で残さないほうがいいと思うの。それでもちゃんと伝わるんですよね。そういうちょっとしたことは、積み重ねるとその職場の雰囲気に影響します。

枝葉、幹、根っこ 重要度と自分の得意分野で仕分けてメリハリをつける

―― 女性管理職の部下育成ポイントはありますか?

坂東 女性は割と、細かいことにこだわりが強い人が多いんですよね。枝葉の部分なのか、幹の部分なのか、根っこの部分なのか。重要度を考えて、枝葉の部分は自分の思う通りでなくてもよくて、部下にお任せというのもある。だけど幹や根っこのところはしっかり理解してもらわないといけないから、そこについてはちゃんと自分の考えを色々な折に触れて伝えたほうがいいですね。

―― 日常業務の中で確認したり修正したり。どこまでするかというのは管理職としての慣れやテクニックも必要ですね。

坂東 そうなんです。枝葉の部分で言うと、例えば私は文書でも、「てにをは」や一行空けなど、そういう形式的なことは得意ではなかったので、そちらはそういうのが大好きな課長補佐に任せていました。私はビジョンや最後の結論のところがきっちりとなっているか、そういうポイントを指摘するほうが得意だったのでそれを担当する。不得意なところは、だれか得意な部下に任せたほうがいいんです。それからこれは、誤解を受ける例かもしれないのだけれど……資料などの文章を、自分から上にあげたものは部長に直されたりするでしょ。課長は最終的に決定しないというときには、できるだけ部下に書かせて「あなたの意見で部長にぶつけてみましょう!」といって、上に訂正させるという方法もあるのよ。

―― なるほど!それは管理職にとっては時短になるうえ、部下の育成や達成感にもつながりますね。

坂東 そうなの。部長に渡すために、80%の出来の部下の文章がきた。それを自分も一生懸命丁寧に直して99%にしたといってもやっぱり部長に直されるのよね(笑)。だったらね、部下には「こうしたらもっといいんじゃないの? でもね、部長にも部長の考えがあるから、まずあなたの案でぶつけてみようね」って。

昭和女子大学総長・坂東眞理子さん(左)、DUAL編集長・羽生祥子(右)
昭和女子大学総長・坂東眞理子さん(左)、DUAL編集長・羽生祥子(右)

<次のページからの内容>
■チームで馬の合わない人同士はできるだけ組み合わせない
■バーチャルリスクでリーダーになる機会を諦めるのはもったいない
■【部下トラブルの心得】「女性だけど、気が付かないな」と思われるくらいがちょうどいい
■子どもは100%整えられた環境でなくても、しっかり育っていく
■【究極のリーダー術】抱え込まず、重要度の強弱を見分ける力
■【理想のリーダー】100%のロールモデルを追い求めない