4歳になるひとり息子を、芥川賞作家夫婦で育てながら超多忙な日々を送る川上未映子さん。仕事、お金、子育て、美容。健康、暮らし、人間関係。しあわせやよろこびだけでなく、おそろしいこと不安なこと、そして思わず、びん詰めならぬゴン詰めたくなる世間のあれこれを綴ります。人気コラム『川上未映子のびんづめ日記』シーズン2、全16回でお届けする第6回目のテーマは、「突然の別れ」です。

 別れはいつも突然にやってくる。何度も別れを経験してなお、こんな単純なことを書いてしまう。今日もフレシネを飲んで考えた。

ずっと一緒に仕事をしてきた、大切なひと

 先日、大切な編集者を亡くしてしまった。彼女はまだ若く、病気がわかってからじつに3カ月、あっというまの出来事だった。

 彼女とはわたしが初めて書いた小説を刊行するときに出会い、そこからずっと一緒に仕事をしてきた。わたしの癖で、「いつか、どっちかが死んだら」みたいな話も、笑いながらよくしていた。「**にはこれとこれをあげるから、すみやかに取りに来るように」と言えば、「じゃあ未映子さん、わたしはあれとあれ、あげるよ」みたいな感じで。まさかこんなに早くそのときが来るとは思ってもみなかった。

「未映子さん、弔事もすごいの頼みますよ。いいこと言ってね」「まかしとき、わたしは小説家にしてなぜかキネマ旬報新人賞女優、最高のパフォーマンスみせたる」とか言って。実際には、泣いて、どうしようもなくて、ぜんぜんちゃんと読めなかったけど、でも、そんなときが本当に来るとはね。今もうまく信じられない。