「身に付けないとヤバイ」という危機感が、語学習得を早める

―― とはいえ、親としては「子どもの英語耳ができるのは7歳まで」などとまことしやかに言われますと、なるべく早いうちに英語を勉強させなければと思いがちです。

勝木 それは企業のマーケティング関係者特有の常とう句ですよね。「子どもは勉強しなくても言葉を覚えるから英語は聞き流すだけでいい」とか(笑)。では、アラビア語を100時間聴き続けただけでアラビア語がペラペラになるでしょうか? 絶対になりません。興味のないことをいくら聞いても頭に入っていかないものです。

 こんなことがありました。子どもの小学生時代の友達で、英語は話せるけれど日本語を全く話せないフィリピン人がいて、その子が全くの初心者から半年で日本語がペラペラになったので驚いたんです。でもそれは日本語を話せなければ仲間外れにされるという危機感があって彼が必死だったからです。例えば学校で廊下を走って友達に怒られたとします。「runは『走る』」「angryは『怒り』」と単語を細切れで学ぶのではなく、廊下を走っていたら友達から腕をつかまれて、身ぶり手ぶりで「走ったことを怒られているんだ」と理解する。語学の習得というのはそういうものではないでしょうか?

―― 確かに子どもにとって「仲間外れ」にされるかどうかは死活問題ですからね。ご子息は部活での仲間との付き合いを通じてリーダーシップを育まれた、と先ほど伺いました。では、お嬢さんはどうでしょうか? どんなふうに興味のあることを見つけられましたか?

勝木 娘はちょっと変わっているといいますか……。男親としては何を考えているのか、正直分からないんですよ。きれいな字を書くので几帳面かと思えば、引っ越して2年も経つのに家電の配線をつながないまま放置していたり。カラオケが下手だと思っていたのに、ある日、突然オーボエを習いたいから買ってくれ、と言い出しまして。やるからにはいいモノを買いたいと。聞けば100万円もするオーボエが欲しいと言うので「ちょっと待て」と。それで一緒に楽器店に行ったんです。初心者なので安いものでいいんじゃないかと店員さんに相談すると、35万円のオーボエを薦められました。それでつい「30万円になりませんか」と値切ったら「値切るなんて恥ずかしい!」って娘が怒りだしちゃったんですよ。

―― なんだか、ほほ笑ましいですね。日ごろ、兆だ億だというお金を動かしているお父さんが店先で5万円を値切っているなんて……。

勝木 いや、関西の人間にとっては挨拶みたいなものですからね。結局、質の良いものの中で一番安いものを買いました。

―― それでも、本人がやりたいことをやるために欲しいというモノは買ってあげるんですね。息子さんからおねだりされたことはありましたか?