時間管理とは「何をやらないかを決めること」

―― 勝木さんの人生に転機をもたらすほど感銘を受けた学びとは、いったいどんな内容だったのですか?

勝木 時間管理とはどういうことかを思い知らされました。これまでの私は時間管理とは「できるだけ多くのことをいかに短期間に効率的にこなせるか」という視点でばかり考えてきました。ところが、それは大間違いだというのです。

 時間管理とは「何をやらないかを決めることだ」。そう言われ、雷に打たれたようでした。そしてその日から「余計な仕事は一切やらない」と決心したんです。

 会社や周囲の人のため、お金のため。それまではそのためだけに仕事をしてきましたが、この3つに「自分のため」が重なる仕事だけをすることにしました。すると、あれもやらない、これもやらない。しなくてもいい余計な仕事がたくさんあることが分かりました。

 仕事が終わらなくても5時になったら帰る――、これを実行したんです。もちろん仕事で成果を出すのは大前提。こっそり帰るのではなく、「失礼します!」と大きな声で挨拶をしてから帰るのです。朝は誰よりも遅く出社し、夕方には誰よりも早く帰社する。そんな私の態度に「あいつをクビにしろ!」と言う人も出てきましたが、「成果を上げているのだからいいじゃないか」と救ってくれる人も何人も現れました。

5時に退社した後は、テニス、ゴルフなどの余暇に時間を費やした

―― 成果を出していればよしとされる外資系企業で、残業をしないことに文句を言われるというのも意外な気がしますが。早く帰るようになってからは、仕事の後の時間をどのように過ごしていたのでしょうか?

勝木 やはりまず、自分の時間が増えましたよね。テニスをしたりゴルフを楽しんだり。

 家族と過ごす時間も増えました。「英作くん」という英語のデータベース作りもしました。子どものころ、NHKの英会話講座にお世話になったので、いつかNHKで講師をやってみたいという夢がありました。それまでも英会話サークルなどで教えていた経験から、便利な英語表現やフレーズを絞り込んでは妻に協力してもらってエクセルに入力し、データベースをストックしていたんです。これをアルクに売り込みに行き、採用されたことがきっかけでNHKから声が掛かるまでになりました。

―― ご子息の受験英語をサポートするときもそうでしたが、まず「学ぶ範囲を決める」ということがとても重要なのですね?

勝木 まさにその通りです。英作くんには10万を超える膨大なオリジナル例文が入っています。そこから数年かけて英作文の中から日常会話に必要な1680のフレーズに絞り込みました。それが私の英会話教室(「SmartEnglish®」)の根幹になっています。いくつも英会話スクールに通ったのに、全然英語が話せるようにならないと嘆いていた80歳のおばあさんが私のスクールにやってきて、3カ月後には見違えるように上達しました。やはり、やる気のある人ほど早く話せるようになります。実は、学歴があって一流企業に勤めているエリートほど、ドロップアウトする確率が高いんです。彼らは「忙しくて通えない」と理由を見つけては投げ出してしまう。

 私自身、英語が話せるようになったのはやっぱり楽しかったからです。最初は楽しくても覚えることが多過ぎて志半ばで諦めてしまう人も少なくありません。だから、やる気のある人が途中で挫折しなくて済むようなシステムをつくりたい。その思いでアプリも開発しました。

―― 絞り込んで1680ですからね。勝木さんが費やした労力たるやすさまじいですね。やると決めたら徹底してやり遂げる勝木さんの集中力はいったいどこで培われたのか。またそうした集中力を子どもに身に付けさせるには何が大切か。もう少しお話をお聞かせください。

* 次回に続きます。

この記事の関連URL
「英作くん」 http://eisaku-kun.com/

勝木さんの3~6カ月程度で英語をマスターするための実践型英会話スクール「SmartEnglish®」
 https://kr21.jp/

同じく、高収入でエグゼクティブなビジネスマンを短期間で育成するプログラム「Smart Bizman」
 https://smart-bizman.com/

(ライター/砂塚美穂、撮影/稲垣純也)