子どもに「勉強しろ」と言ったことはない

―― ご自身がそうした経歴をお持ちですと、親として「ご子息もバイリンガルにしたい」と当たり前のように思うものですか?

勝木 いえ。それは全くないです。ある人にこんなことを言われたんですよ。「息子は親父とは全然違う方向に行くものだ。親父がもし失敗したときに自分も同じ道を歩んでいたら共倒れしてしまう。だから、本能的に父親の興味とは全く違う、むしろ父親がそれだけはやってくれるなと思うようなことを選ぶものだ」と。だから私も無理やり「英語を勉強しろ」とは一度も言いませんでした。

 実際、私と息子は真逆のタイプです。私は、何事もコツコツ勉強して200%やり切らないと気が済まないタイプですが、息子は手を抜けるところは徹底して手抜きする。50%ぐらいの力で、いつもいいところを持っていく、運のいいタイプです(笑)。小学校の頃から本当に勉強嫌いで、遊んでばかり。塾へ行くのが嫌だと言って川にテキストを投げ捨てたこともありました。中学校に進学してからはバスケットやバレーなど部活動を通じてリーダーシップを発揮して仲間をつくり、自分の居場所をどんどん開拓していったようです。その辺りも私と全然違います。

 いい先生に恵まれて世界史を好きになったらしく、世界史の成績は悪くなかった。ところが、いざ大学受験を控えた11月の模試の判定では、希望する大学はすべてE判定というありさまでした。とりわけ英語の成績が悪く、偏差値もかなり低く……。嫌いなことを後回しにしていたんでしょう。浪人したところでコツコツ勉強するタイプでないことは分かっていたので「滑り止めだろうが合格した大学に行きなさい」と言ってありました。普段から「親父だけには頼りたくない」と思っていたようでしたが、いよいよお尻に火がついたのか、年末になって妻を通して私に泣きついてきたんです。