起業するまでの経緯や仕事と家庭の両立についてなど、多くの壁を乗り越えてきたママ起業家や社長にインタビューする「私が壁を乗り越えたとき」。第7回は、スペースシェアビジネスを起業した軒先株式会社代表取締役の西浦明子さんを紹介します。

 西浦さんは、ソニーや政府開発援助(ODA)関連の仕事で活躍後、起業。2008年に使っていない僅かなスペースを貸したい人と借りたい人をインターネットでマッチングさせるビジネスを立ち上げました。現在は、子育てをしながら、空きスペースの件数2500以上の『軒先ビジネス』とシェア型パーキングサービス『軒先パーキング』などを運営する会社を経営しています。

 前編「『ニッチで1番に』で人生を切り開いてきたママ社長」に続き、今回は妊娠を機に起業した経緯や、子育てと社長業との両立について紹介します。

子育てしながらお小遣い稼ぎと思ったら、出店場所がないことに気付く

 転職後、37歳で結婚をした西浦さん。すぐに子どもを授かり、妊娠6カ月で退職をしました。

<span style="font-weight: bold;">西浦明子</span> 1969年2⽉28⽇神奈川県⽣まれ。上智⼤学外国語学部卒業後、1991年ソニー(株)⼊社。海外営業部に所属。1994年ソニーチリに駐在、オーディオ製品などのマーケティングを担当。2000年、同社を退社後帰国。創業時のAll About Japanで広告営業を経たのち、2001年(株)ソニー・コンピュータエンタテインメント⼊社。商品企画部にてプレイステーション2やPSPのローカライズ、商品開発などを担当。2006年同社を退社後(財)⽇本国際協⼒システムで政府開発援助(ODA)関連の仕事に携わる。2007年、出産を機に同財団を退団。約半年の構想準備期間を経て、2008年4⽉に軒先を創業し、2009年に法⼈化
西浦明子 1969年2⽉28⽇神奈川県⽣まれ。上智⼤学外国語学部卒業後、1991年ソニー(株)⼊社。海外営業部に所属。1994年ソニーチリに駐在、オーディオ製品などのマーケティングを担当。2000年、同社を退社後帰国。創業時のAll About Japanで広告営業を経たのち、2001年(株)ソニー・コンピュータエンタテインメント⼊社。商品企画部にてプレイステーション2やPSPのローカライズ、商品開発などを担当。2006年同社を退社後(財)⽇本国際協⼒システムで政府開発援助(ODA)関連の仕事に携わる。2007年、出産を機に同財団を退団。約半年の構想準備期間を経て、2008年4⽉に軒先を創業し、2009年に法⼈化

 「仕事にやりがいはあったものの、子どもを産んでから大きな組織でやっていけるかどうか不安で。産後自分がどんな体力になっているのかも分からなかったので、いったん子育てに専念しよう、リセットしよう、と。仕事をやめてもなんとかなるだろう、と漠然と思っていました」

 いざ仕事をやめてみると、出産準備中は毎日やることもありません。そこで、子どもが生まれたら何をしようか考え始めました。

 「家で子育てをしながらお小遣いを稼げることをやろうと色々探していたときに、以前住んでいたチリに関われる仕事がしたい、とふと思いつきました。そこで、日本ではまだあまり見かけないインテリア用の金属製食器をチリから個人輸入して、ネットショップで販売したらどうかと考えました」

 まずはどんな商品がいくらくらいで売れるのか、テストマーケティングをしようと試し売りできる場所を探し始めました。けれど、短期で気軽に物を販売できる場所がないことに気が付きます。

 「不動産屋に行けば賃貸用のテナントを紹介してくれますが、1カ月単位で貸してくれません。そこで、自由が丘駅近くのウィークリーショップに問い合わせをしたら、3坪くらいのスペースが1週間21万円、しかも半年先まで埋まっていて。予算的にも1日3万円は出せないけれど、1日3000円なら出せる。テーブル1つ置かせてもらえる場所を、色々な人が使うことができる仕組みがあればいいのではないか、と思いました

妊娠8カ月で起業準備開始。誰かが思いついてしまう前にやってみたい

 たまたま夫が不動産会社を経営していたことから、早速自分のアイデアを相談してみたといいます。

 「『小さなスペースはもうからないから、誰もやりたがらないと思う。逆に、誰もやっていないから面白いかもしれないね』と言われました。空いているスペースはいくらでもあるから、気軽に使えるようになったら新しい不動産市場になるかもしれない。成功するかどうか分からないけれど、誰かが思いついてしまう前にやってみたい、と思ったのが妊娠8カ月のときでした」

 「そこからビジネスを構想し始めました。仲介をインターネット上で行えば、“持たざる経営”ができます。失敗するかもしれないからまずは小さく始めて見ようと思い、サービス開始とスペースを募集するための告知をホームページ上ですることにしました」

 早速、ホームページを作ってくれる人を一括見積もりサイトで募集しました。

 「応募してくれた会社の方と何人か会ったのですが、クライアントがおなかの大きい主婦のおばさんだと分かって皆さんドン引き(笑)。しかも、やろうとしているサービスもよく分からないし……。見積もりの幅も広く何が妥当なのかも分からない。結局、一番見積もりが安い会社にお願いしました」