リビングは親から子どもへ様々なことを伝える場。その内容は親の価値観や仕事観などもありますが、暮らしに関わる家事のやり方も伝えたいことの一つです。食卓の整え方はもちろん、洗濯が終わったらどのように干すのか、ゴミ箱がいっぱいになったらどうするのかといったことを親がするのを見るうちに、子どもは自然と覚えて、家事ができるようになります。それは自立への初めの一歩かもしれません。

 「『リビング上手』は子育て上手!」特集の第5回ではそんな自立力を育てるリビングを紹介します。鎌倉に住むTさんは「デュアル」は「デュアル」でも、子どもとふたりの二人三脚で暮らすシングルマザー。築40年近い中古住宅をリフォームし、家事機能のほとんどをリビングに集結させています。それは子どもの自立心を育むために考え抜かれたTさんならではの工夫です。意外な副産物ですが、この家に住むことで、子どもを叱ることも減ったのだそう。その理由とはいったいどのようなことでしょうか。
 それでは、「『リビング上手』は子育て上手!」特集最終回、どうぞご覧ください。

※近年、日本の住宅ではリビング、ダイニング、キッチンが一続きとなった空間が増えていることから、本特集ではダイニング、キッチンもリビングの一部として扱います(例えばダイニングテーブルで学習することをリビング学習と呼ぶなど)。

【「リビング上手」は子育て上手!】
第1回 中庭、個室とひと続き 遊ぶ子たちを見守るリビング
第2回 自己主張期に効果「自分でお支度」リビング収納
第3回 窓に落書き、壁に貼り絵で自己肯定感が高まる部屋
第4回 リビングを1畳減らす勇気で「ものだらけ」が解消
第5回 子のことがよく見えるリビングで「叱る」が減った ←今回はココ

 

Tさんファミリー
40代の会社員。シングルで5歳の長男を育てる。30代で東京・豊洲のタワーマンションを購入。昨年マンションを売却して鎌倉の中古一戸建てを購入し、移住する。「毎週のように知り合いの親子連れが遊びに来てくれてにぎやかです。特に子どもに人気で『この家が好き』とリピートしてくれる子も(笑)」

人生の“折り返し地点”を意識したことが、移住の後押しに

 昨年8月、東京・豊洲のマンションから鎌倉の中古一戸建てへと引っ越してきたTさん。移住を決意するきっかけになったのは、「自分が40歳になったこと」だったと振り返ります。

  「80年生きるとしたら、40歳はもう折り返し地点。人生の後半戦では思い残したことのないように、やりたいことを全部やってやろう! と思ったんです」。 その“やりたいこと”の一つが、「海の近くに住むこと」。鎌倉は特に地縁のある場所ではありませんでしたが、山も海も近くにあること、寺社仏閣が多いこと、一定水準以上の教育環境があることに引かれ、鎌倉に移ろうと決意しました。

 「私自身、歴史を感じさせるものが好きですし、そうしたものに囲まれて子育てしたいと思ったんです。引っ越すなら子どもが小学校に入る前だな、と思い、すぐに実行に移しました」。当初は、土地を買って新築の一戸建てを建てるつもりだったTさんですが、なかなか希望に合う土地が見つからず、どうしようか…と考えていたところに不動産会社から紹介されたのが、中古の一戸建て物件でした。

 「見学に行ってみたら、すぐ近くに公園があって、海岸へも歩いて行ける距離。鎌倉の山を見渡せる窓からの眺めも気に入って、即決しました」。とはいえ、築38年の家は水回りが古く、部屋も細かく分けられて使いづらかったため、壁を抜いて全面的にリフォームすることに。リフォーム雑誌などを参考に、テイストが好みで、なおかつ大規模リフォームを多く手掛けているリフォーム会社を選びました。

キッチンやワークスペースとの間を仕切らず、一つにつなげた2階リビング。構造上、外すことのできなかった耐力壁はそのまま残し、石を貼って自然の風合いを感じられる内装に
キッチンやワークスペースとの間を仕切らず、一つにつなげた2階リビング。構造上、外すことのできなかった耐力壁はそのまま残し、石を貼って自然の風合いを感じられる内装に

<次ページからの内容>
・ 子どもを家事の戦力に。すべてをリビング回りでできる配置
・ 「ママが大変そう」と後片付け、洗濯も自分からお手伝い
・ 子どもの希望を取り入れたキッズルームで家への愛着を育てる
・ 子どものことがよく見えるから叱る理由がなくなった