今回、お話を聞いたのは大阪府在住の元保育園職員M・Sさん。「保育士の資格を持っていたら、子育てのプロだよね」という印象を持たれるそうですが、「自分の子育てと保育と教育は全然別のもの」だとM・Sさんは言います。一般の会社で働いている女性が、保育園に自分の子どもを預けているのと何ら変わりないそうです。そんな保育の現場で十数年働いたのちに出産で退職をし、その後の自分の未来像を思い描きながら準備中というM・Sさんが感じてきた「もやもや」と「夢」を紹介します。
3人目の出産時、結婚前から在籍していた職場をギリギリで退職
正職員の保育士として、独身時代から1つの園で10年以上働き続けていました。しかし、現在6歳になる3人目の出産時に「育休復帰は無理だ」と判断し、退職を選びました。
本当は同じ園で働き続けたいという気持ちもありました。同じ園なら育休もブランク扱いにはならず、将来キャリアアップもできるからです。でもタイミングが合わなかったりするとなかなか、復帰できないことがあります。保育園は4月始まりなので、その時点でピタッと保育士の数をそろえてスタートさせたいんですね。タイミングが合わない時期に復帰しようとすると、自分の居場所がない…ということもあります。
一方、育休明けに違う園で働くことになると、キャリアを一からスタートさせることになります。これは先輩方を見ていて気づいたことなのですが、自分が理想とする保育を園に取り入れたい、と思っても、その権限を持つ主任のポストに、中途採用者が就くことは難しかったりします。なので、新卒採用で入った保育園でキャリアを積みたいという思いはずっとありました。
でも、現実的に子どもが3人いる状況で、決められた時期に育休から復帰することは厳しいと感じました。理由は以下です。
保育園での仕事は、朝が早く、夜は遅くまで拘束されます。一方、自分の子どもたちの預け先は、早朝から夜遅くまでは預かってくれませんでした。そして私の保育士としての賃金は安く、時給換算で1000円以下。時間外の預け先としてファミサポも検討しましたが、子ども3人×800円になるため、1時間当たり2400円が必要になり、私のお給料とは全く見合いません。これでは、子どもたちを我慢させたうえにお金が出ていく一方で、何のために仕事しているのか分かりません。
また、3人の子どもの当時の年齢は0歳・2歳・4歳。寝る時間がそれぞれ違うし、寝かしつけにも手がかかります。0歳児は3時間ごとに起きますから、ハードな仕事との両立で、私の身体ももたなくなることは容易に想像がつきました。