わたしはクルマに乗るのが大好きでたまらない。そして、息子も……

 子は親の鏡ってのはホントだと思っていた。少なくとも、我が家の場合。というのもですね──。

 幼稚園への毎日の送り迎えと、週に1回ずつのレスリングと水泳の付き添いは、基本、わたしの仕事である。

 残念ながらというか幸いにしてというか、虎(息子4歳・仮称)の通っている幼稚園にはスクールバスがなく、また、レスリングと水泳の教室は我が家からちょっと離れたところにある。

 もし送り迎えの担当がヨメだったとしたら、そのことに対してだいぶストレスを感じていただろうが、幸い、わたしはクルマに乗るのが大好きでたまらない人間である

 以前は新車を購入するたびに九州までひとっ走りして“馴らし”をしたものだったし、パリからウラジオストクまでキャンピングカーでの旅に挑戦したこともある。残念ながら治安の問題もあって、モスクワからはシベリア鉄道に切り替えたのだが、とにかく、ロングだろうがショートだろうが、クルマの運転はわたしにとって大いなる娯楽なのである。

 実は、そんなわたしも子どものころはクルマが大の苦手だった。聞けば、ヨメも同じだったという。二人とも、遠足のたびに嘔吐用の袋を用意しておかなければならないタイプだったのである。

 だが、自分で運転するようになると、すべてが変わった。そして、父親の先天的な資質ではなく、後天的な趣味の影響を受けたらしい虎は、0歳児のころから車酔いとはまったくの無縁だった。乗れば、すぐに熟睡。これが電車での旅になると、東京から新大阪まで行ってもまったく寝てくれないのだから、よほどクルマが性に合っているのだろう。

 クルマでは、当然、音楽をかける。

 何年か前に発症した“ウルトラマン中毒症”にまったくといっていいほど改善の兆しが見られない虎は、最近、クルマに乗るたびに注文をつけてくるようになった。