日経DUAL創刊時から、連載「ママ世代公募校長奮闘記」を執筆してきた大阪市立敷津小学校・元校長の山口照美さん。昨年4月からは、元民間人校長として公教育に関わる山口さん。そんな山口さんの言葉をストレートに伝える連載の7回目です! 

* 本連載の最後のページには、大人ではなく“お子さんに向けた”山口さんからのメッセージがあります。ぜひパパやママが声に出して読んであげてください。

感情と事実を分けられるようになったのは何歳から?

 「無理!」という言葉で、思考停止している子どもにたくさん会ってきた。言い訳にくるんだ「無理!」を大人から聞くことも多い。

 先日も、ある人の職場の愚痴をずっと聴いていた。「周りがダメだ」「プロ意識がない」「だから自分の思う仕事ができていない」……。相手が愚痴を吐き尽くした後に、いくつかの質問をした。メンバーの本音をどこまで聴いてきたか、具体的に改善に向けて提案はしたのか、打ち手はすべて使ったのか。一つひとつほぐすと、できることがまだある。具体的なできることを話し合い、持ち帰ってもらった。

 翌日、早速実践して、いい方向に向かいそうだというお礼のメッセージが来ていた。

 自分が感情と事実を分けられるようになったのは、何歳ぐらいだろう。

 振り返って恥ずかしくなる。まだ全然あかんやん。分けられずに、悶々とする夜がまだある。他人のことなら落ち着いてアドバイスできるのに、我がことになると冷静になるのに時間がかかる。

課題解決に使える、3つのクエスチョン

 私が課題解決のために使う、3つの自問自答がある。「無理!」という相手との対話にも使える。

(1) 「本当に?」

 人は、最近あったいくつかの出来事で印象を固めてしまいがちだ。“ミスが多い部下”でも、「年間通して何個のミスをしている?」「たまたま続いただけでは?」と考えると、実はそんなにミスが多くなかったりもする。「無理!」と言う子どもは自分を卑下していることも多い。英語ができないと主張する子のノートや小テストを見れば、その子が十分に力があると分かることもある。

 「本当に?」と疑う習慣をつけよう。「データ、観察、ヒアリング」の3点セットをそろえて、問題に向き合うと真の課題が見つかる。

 そして、ネットで多くのデータや知見が簡単に参照できるこの時代、印象だけで語る人は信用されない。これからの時代を生きていく子どもたちにも、「本当に?」という質問に答える力が必要になる。。