もしもわたしが出会いアプリに登録するなら・・・

 へえ、なんて聞いてみると、それは必ずしも性的なものだけを目指した従来よりの出会い系というわけでなく、SNSならではの人脈や出会いの可能性を広げる、みたいなおしゃれな雰囲気のもので、顔写真を載せて簡単なプロフィールとアピール要素を載せて、マッチングするのだという

 それで「色んな人に会えて楽しいよ、このあいだは盛りあがってそのまま泊まっちゃったわ」なんて、明るい顔で言うのである……。生まれてこのかた合コンにも参加したことのないわたしは自分でもどうかというくらいその話に食いついてしまい、「そ、そういう世界があるんか」と、妙に感心してしまったのだった。 

 で、わたしは眠るまえ、そういうアプリにもし自分が登録するとしたら……みたいなことを想像してみた。川上未映子という名前だとまずいよね。なんか別名で、写真も盛りに盛ったやつを載せるんだろうか載せるんだろうねやっぱ、みたいなことを考えて、布団の中で、新鮮だった。職業欄は、自営業になるのかなやっぱ。プロフィールは、そうだな……あれこれ真剣に悩んだあげくに出てきたのが「本と花が好きです」で、まじでどうかと思うけど、これがわたしの実力だった。で、名前のよこに年齢だよな、年齢は、40歳、と……。よ、40歳……? 空想のなかの年齢欄に書かれた40という数字を見て、わたしは思い知ったのだった。

40歳という数字の持つ衝撃が……あんがいすごい

 これ、誰かとこんなふうに出会う年齢や、ない。おそらくは23歳とか、26歳とかがひしめきあう登録者のなかで、いったい誰が、40歳の人間をわざわざクリックするだろう。どれだけ写真が盛れていたとしても、40という数字のまえではすべて痛みに反転するのは確実である。そうか、年齢の記号力って、年齢って、こういうものなのか、40歳って、こういうことなのか……39歳とも違う、これが40歳、昔でいうところの初老、……その衝撃は、あんがいすごかった。

 わたしは空想のアプリをそっと閉じ、空想のスマートフォンの電源をそっと落とした。このようにしてわたしははじめて客観的に、40歳という年齢が持つ社会的なイメージに触れたのであった……

 そうか、今までみんな、わたしが空想のアプリ登録で思い知ったようなあんばいで、現実社会で自分の加齢に向き合ってきたのかもしれないな。ああ、友よ……できることなら、みんなで輪になってフレシネを飲んで語り合いたい。40歳について、加齢について、女について、これからについて……今日もひとりフレシネを飲みながら、そんなことを考えた。

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