クックパッドの初期からのメンバーとして、「料理を楽しみにする」人を増やすためのサービスに日々取り組んでいる小竹貴子さん。自身も二児の母として、仕事と育児のDUALライフに奮闘している中で、気になっているのが「お弁当」の存在なのだそう。

 幼稚園に通わせている次女に毎日作り、小学校に上がった長女にも長期休暇中には学童保育で食べる昼食として持たせています。

 働く親にとっては、とかく「手間」「面倒」「苦行」という位置付けで語られることが多いお弁当ですが、小竹さんが日々感じているのは「お弁当ならではの、親子の関係を豊かにする可能性」。ある論文に注目したことをきっかけに、田園調布学園大学子ども未来学部で教鞭を執る横尾暁子さんを訪ねての「お弁当対談」が実現しました。「お弁当は親子の交換日記」「手抜きでゴメンなお弁当でも、実は子どもは自慢しているかも」という名言が飛び出した前編に続き、後編ではお弁当の役割や、気持ちをラクにするコツなど、お二人の言葉をご紹介します。

<前編はこちら> 小竹貴子×横尾暁子 「お弁当」について真剣対談

栄養や見た目だけではなくどんなメッセージを伝えたいか

小竹貴子さん(以下、敬称略): 子どもが苦手な献立を入れるときはなんておっしゃっていますか?

横尾暁子さん(以下、敬称略): なぜそれを食べてほしいのか、渡すときに一言添えるようにしています。「風邪を引かない元気な体になってほしいから、ひじきを入れてあるよ」というふうに。そうすると、「わかった」と言って、食べて帰ってくることが多いです。気持ちを伝えるというのが大事だと思います。

小竹: お弁当を通じてそういうやり取りができていると、一緒に食卓を囲める時間が少なかったとしても濃いコミュニケーションができるような気がしますね。

横尾: 「食育」という言葉が出始めたころ、「親子で一緒に食べるのがいい」と当然のように言われることにどこか違和感を覚えたんです。一緒でなければいけない理由は何か、一緒に食べなくてもできる食育はあるのではないかという疑問が出発点になっています。

小竹: 共に過ごす時間を長く持つことが食育の重要なメッセージではないと。親子で重ねるべき時間は量ではなく質だというメッセージは、とても励みになります。

横尾: 単に共に時間を過ごせばいいのではなく、子どもにどういうメッセージを伝えて、子どもからもどういうメッセージを受け取っていくのかが大事なのだと思います。おいしくて手の込んだ料理を作ることが目的ではなくて、そこに込めた親の思いを分かりやすく伝えていく。それこそが食育の意味なのだと私は思っています。

田園調布学園大学子ども未来学部講師の横尾暁子さん(左)とクックパッド ブランディング・広報担当VPの小竹貴子さん
田園調布学園大学子ども未来学部講師の横尾暁子さん(左)とクックパッド ブランディング・広報担当VPの小竹貴子さん