3ステップで、親が「やらせる」計画から、子ども自ら「できる」計画に

小川 受験生は、学校や塾、膨大な宿題など、毎日のスケジューリングが大変だという相談を保護者からよく受けます。しかし、「予定を詰め込む」ことと、「スケジューリング」をごちゃ混ぜに考えている家庭が多いんです。まず、皆さんが今どういう順番で予定を立てているかを認識することが大切です。「親の性格セルフチェックシート」を使いながら、あなたはどんな性格で、今どういう関わりをしているか。そのうえで、スケジューリングの基本について解説します。

中学受験専門個別指導教室SS-1代表 小川大介さん。子どもが最速で最高の結果を出すコーチング技術や、心理療法的なアプローチを取り入れた独自の指導方法を開発。大手進学塾の成績アップ率は3カ月以内で96.4%、難関中学合格者は8000人以上
中学受験専門個別指導教室SS-1代表 小川大介さん。子どもが最速で最高の結果を出すコーチング技術や、心理療法的なアプローチを取り入れた独自の指導方法を開発。大手進学塾の成績アップ率は3カ月以内で96.4%、難関中学合格者は8000人以上

 特に低学年では、塾に入る前に身に付けておきたいことの一つとして学習習慣の話をしっかりと行い、受験生の親としての心構えや日常の中でちょっと取り入れるだけで変わることを伝えていきます。必要なのは、3つのステップ。親が「やらせる」計画から、子どもが「これならできる」と思う計画をつくれるようになるというのがメリットですね。一方、高学年の場合、子ども自ら習慣を変えていくのは今からでは難しいという声も聞かれます。そこで、スケジュールの整理や優先順位の付け方において子どものより良い変化につながるように、現実的に親ができるフォローの部分に重点を置いてお伝えしていきます。

―― 「やらされる」と、やはり子どもは伸びないのでしょうか。

小川 やらされている段階で、スケジューリングではなく、ただの命令なんです。「子どもが伸びるスケジューリング」とは、子ども自身が自分にとって大事にしたい生活パターンがあって、そのうえで予定を組み込んでいくものです。その順番がひっくり返って、やることが先に決められていてそれを全部詰め込むことが計画となり、その後どう生活していくか考えましょうとなるからどこかおかしくなってしまうんです。3ステップを守って繰り返していくことで、子どもは自分でタスクリストを選び取り、自ら管理していけるようになります。

―― ステップは、3つに集約されるのですね。必要なタスクを選び取り、自ら管理する力は、受験を乗り越えた後も力になりそうです。

小川 この3ステップに親が関わることで、「親が子どもを尊重する」ということを本当の意味で練習できます。親が自分の間違った関わり方に気付くときには正直不安や抵抗感を伴うものですが、それをあえて受け入れることで、親が変わり、子どもも確実に変わりますね。

―― 昨年、低学年で使用したネガポジ変換表は、今年は高学年の項目にも入れるそうですね。ネガポジを実践することで、親子にどんな変化があるのでしょうか。

小川 例えば、じっと座っていられない子を、「落ち着きがない」と捉えるのか、または、「エネルギッシュで好奇心旺盛」と捉えるのか。同じ特徴でも、見方によって大きく変わります。「覚えるのに時間がかかる」「失敗しても翌日にはケロッとしている」「母の言うことを全然聞かない」など、親の頭を悩ませる子どもの行動の裏には、必ず長所が隠れているんです。今回のセミナーでは10項目以上のありがちなネガティブワードとそのポジティブ転換表現をお渡ししますが、それを日常で意識することで親の不安の40%は減るはずです。

 「あんなに頑張っているのに、なぜうちの子はうまくいかないんだろう」っていうときは、“頑張って”間違った関わり方をしているんです。でも、親の目には基本的に子どもの短所が目に付くもの。今その子が持っている能力は当たり前のもので、それを前提に足りない部分を他の子と比べてしまうからです。私たちのように何千人も見てきたプロは両方の見方を知っているので、子どものいい所を見つけるのがうまいんです。それはなぜかというと、単に子どもの目に付いた部分、つまり、その子の目立つ特徴をいいように解釈しているからです。目立つということは、エネルギーがそこにあるということで“良さ”なんです。

 子どもの長所を自覚した瞬間から、いい所をより伸ばしてあげようというふうに親の意識が変わります。子どもはフィードバックを受けながら育ちますが、これまで叱っていたのが褒めるようになると、子どもは自信を持ってその力を使い始めるようになります。結果的に集中力が伸びたり、望ましい行動が今までより1回、2回多くなったり、それを繰り返すことで力が付いて成績が伸びるのです。

―― 親は、子どもにとってよりいいと思う方法を選択します。それは子どもにとって、ときに押し付けとなってしまうのでしょうか。

小川 親は自分のことしか知らないんです。知らないけれど何かしなけければいけないから、かろうじて自分の知っている良かった事例を参考に、子どもにやらせるんです。つまり、そういう人は責任感があるいい親だということ。そこに私たちのような受験のプロが客観的に見て、「これとこれをすればいいんですよ」と道筋を示すことで、子どもと関わるときに使える引き出しが増えますよね。それがこのセミナーの一番の価値だと思います。