就職、転職、独立、そして、結婚、出産、育児……女性の人生はいくつものライフイベントによって彩られ、同時に多くの迷いも生まれるもの。社会の第一線で活躍する女性から、人生の転機とその決断のポイント、充実したライフ&ワークのために大切にしている価値観を聞く連載企画をお送りします。今回は、男女共同参画やワーク・ライフ・バランスの分野で精力的に取材・執筆活動を行うジャーナリストの治部れんげさんインタビューの後編です。インタビュアーは編集長の羽生祥子です。※前編『治部れんげ 男女平等は女性が生き抜く必須条件』もお読みください。

中身は完全におやじ、「生んだら負けだ」と思っていた

羽生編集長(以下、羽生) helpではなくshare。DUAL読者には共感する人が多いと思います。治部さんご自身のワーク・ライフ・バランスはいかがでしたか?

治部さん(以下、敬称略) 留学する前の記者生活はひどかったですよ。日中は取材3~4件こなして、会社に戻って18時くらいから「さあ、仕事だ」という感じで。性別は女性ですが、中身は完全におやじでした(笑)。周りにも男性が多かったこともあって、当時は「産んだら負けだ」と思っていました。

羽生 ええ! 子どもフレンドリーな印象の治部さんが「産んだら負け」と思っていたなんて……意外です。

治部 妊娠がわかったのは留学から帰ってすぐだったのですが、それからは180度、人間が変わるような経験の連続でしたね。私の場合、とにかくつわりが重度で、出社どころか起き上がれないくらいの状態になってしまったんです。それまでインフルエンザにかかったこともない健康優良児で毎日元気に走り回っていたのに、目の前の本棚に手が届かないくらいの弱りよう。

 伏せっている日が続くと、気持ちが塞いでうつ状態になって、「自宅のある4階から飛び降りたら死ぬかなぁ」なんて考えてしまったこともあります。外出できるようになってからもフラフラで、エレベーターかエスカレーターを頼る日々。妊娠前は階段を走っていた私が初めて味わった“弱者体験”でした。

 この弱者体験というのが私にとってはとても大きな意味がありました。今盛んにいわれている保育園政策についても、「駅前に24時間の保育園を作ればいい」というのは、大人の仕事を優先してその都合を子どもに押し付けているだけなので私は賛成できないんです。