お弁当の記憶はじわじわと効いてくる

横尾: 幼稚園・保育園で子どもの話を聞き取ったときにも、よく出てきたんです。「お母さんいつも忙しいのに、お弁当作ってくれたんだよ」とか。普段の行動もよく見ながら感じ取っているのだと思います。

小竹: そうなんですね。どちらかというと、子どもは「自分を受け止めてほしい」という気持ちが強いのだと思っていたのですが、親の気持ちも感じ取っているんですね。

横尾: よく見ていると思います。それに、親だって自分の家族にくらい、自分の頑張っている姿を素直にアピールしていいと思いませんか。親からすると「手抜きをしてしまった」という料理なのに、子どもがとても気に入るということもよくありますしね。

小竹: あります、あります。うちの娘の好物はダントツで「ちくわキュウリ」です(笑)。作っている私からすると「こんな簡単でごめんね」と思うおかずでも、子どもからするとワクワクするおかずみたいで。親の勝手な思い込みで罪悪感を持つこともあるのかな?と思って、できるだけ子どもの感想を聞くようにしています。お弁当に対する「こうあるべき」という呪縛があるのかもしれませんね。

横尾: そうですね。逆に親心でしてあげたいことがすぐには伝わらなくても、後からじわじわと効いてくることもあると思います。

小竹: ご飯がおいしく保存できるという理由でお弁当箱をまげわっぱにしたときも、最初は「かわいくない」と嫌がったんです。でも、ある日、園長先生から「素敵ね」と褒められたことをきっかけにお友だちから一目置かれるようになったらしく、今では気に入ってくれているみたいです。「これ、ご飯がしっとりするんだよ」なんて。

横尾: 私自身の子ども時代を振り返ると、母がいつもお弁当に玄米ご飯を入れていたんです。当時はおいしいと思えなくて「茶色いご飯はイヤ」と訴えたりして、母もゆかりを混ぜてくれたりといろいろと工夫してくれていました。そのときの母の気持ちというのは、大人になった今、じわりと感じることができるんです。だから、すぐには伝わらなくても積み重なって効くコミュニケーションもあると考えていいと思います。

(取材・文/宮本恵理子 撮影/品田裕美)