生活保護家庭の子は世帯分離しなければ大学に行けない、は時代遅れか

 

駒崎 よく分かりました。保守である自民党が同一労働同一賃金に踏み込んだというのは偉大な功績です。とはいえ、母子加算を削るということは当事者にとっては相当のダメージになるので、厚労省には頑張ってほしいと個人的には思います。財務省のデータは、世帯主の母親の3割がなんらかの疾病や障害を抱えているという実態を無視したものだと憤りを覚えているんです。

塩崎 想像するに、ひとり親の方々は、両親がいる家庭と比べて子どもを預ける頻度も増えるでしょうし、色々大変なわけですよね。ですので、様々なデータをよく見たうえで、母子家庭の生活実態に沿って考えることが大事だと思います。

駒崎 今の話につながりますが、「生活保護家庭の子どもが大学に行っちゃダメ」となっている状況を何とかしていただきたいなと。

塩崎 大学に行っちゃダメとまでなっていないですよね。

駒崎 「親と世帯分離すれば大学に行っていい」となっています。

塩崎 そうですよね。生活保護家庭以外の低所得家庭とのバランスを考慮しているのです。

駒崎 しかし、世帯分離をすると生活保護費が削られることになるので、結果として子どもたちが大学に通いながら必死にアルバイトをして学業に専念できないということが起きています。実は2004年までは高校に進学する費用を支給していなかったんですが、さすがにそれは改善されました。であれば大学も許可してほしいですよね。大学がぜいたく品だった昔とは違って大学全入時代とも言われる現代であり、大学入学は貧困連鎖解消の条件にもなると思うのですが。いかが思われますか。

塩崎 生活保護で何をカバーするか、そして、子どもたちが必要な教育を受けることにどう支援するかという二つの問題を同時に考えていかなければいけませんが、貧困の連鎖解消のために大学進学が有効に働くと思いますので、給付型奨学金など、多方面からの政策で取り組んでいきたいですね。

駒崎 ぜひご検討をお願いします。

――「下」編へ続きます。

塩崎恭久
厚生労働大臣。1950年生まれ。1975年東京大学教養学部卒業、1982年ハーバード大学行政学大学院修了。衆議院法務委員長、外務副大臣、内閣官房長官、拉致問題担当大臣などを歴任した。

(文/宮本恵理子 撮影/川田昌宏)