【8】1日10分でも継続が大事

 ワーママ&パパが取り入れるとなると、毎日45分間を費やすのは難しいという人も多そうですね。その場合、1日20分でも10分でもいいんです。大切なのは継続的に行うことです。

 マインドフルネスのプログラムでは、ヨガが最も注目されているかもしれませんが、逆にヨガはポーズをとることにとらわれがちな面もありますよね。実はトラディショナルなマインドフルネスのトレーニングプログラムでは、座ること・身体を動かすこと・歩くこと・食べることなど日常生活に根差したことを行うのです。普段、無意識に行っている行為に意識を向け、一瞬一瞬の短い時間、一息の呼吸、体の変化、心の変化、自然体な自分を注意深く観察することにより、無意識から生まれるストレスから解放され、新たな自己への気づき、新しい人生へ自然と導かれていくと考えられています。

 マインドフルネスを取り入れることで大事なのは、「心の安定。心が安らかな状態になること。落ち着いていられるようになること」です。

 例えば短気な性格だと自覚している人なら、あっちで怒って、こっちで腹を立ててという状態に陥ったとしても、すぐに落ち着けるようになる。落ち着くのが早くなれば、落ち着いている時間が長くなりますから、余裕が出てきて集中力が高まるわけです。すると、こういうことをしなければならないということにフォーカスしやすくなります。

家庭でマインドフルネスをするときの注意

(1)トレーニングするスペースを片付ける(雑念を入れない)。トレーニング中は時計を見なくてもいいようにする(アラームをセットするなど時間が分かるようにするといい)
(2)心身ともにリラックスできるように動きやすいウエアを着る
(3)呼吸を強く意識して、その動きを観察する
(4)うまくいったかいかないかという結果ではなく自分の感覚を見つめて受け入れる
(5)心や体の状態は絶えず変化するので、トレーニングがうまくできない日があっても気にしない
(6)トレーニング後の変化を定期的に記録して「気づき」を振り返る
(6)専門トレーナーが指導するワークショップや講習会に定期的に参加。自己流にならないようにする

腰を起こさないと猫背になる(左)。腰を起こし骨盤を起こすと自然に背筋も伸びる
腰を起こさないと猫背になる(左)。腰を起こし骨盤を起こすと自然に背筋も伸びる

【9】時間の使い方にプライオリティーをつけられるようになる

 落ち着いている時間が長くなることでの具体的な効果としては、「終わったことに対して反すうせず、引きずらずに切り替えて、できなかったことは物理的にできなかったこととして捉えることができるようになる」ということもあります。

 日々の仕事でどうしても終えることができないと、それを引きずって子どものお迎えに行く、子どもの相手をする、といったことが起きてしまうかもしれません。でも、できなかったことを考えるのにエネルギーを掛けるのはもったいない。だったら切り替えて次の日にどういう順番で仕事を片付けるのかを考えるようにする。そのためにマインドフルネスが活用できます。

 何をしなければならないのか、時間の使い方にプライオリティーをつけるには、「冷静に客観的に」という視点が必要ですよね。「あれをやらなきゃ、これをやらなきゃ」という精神状態は穏やかではありませんから、呼吸も浅くなっているはずです。そうなると判断を誤って、細かいことで言えばタイピングミスも増えるでしょうし、添付ファイルを忘れたりもするでしょう。でも落ち着いていれば「ちゃんとしたかどうか」を確認して終えられます。つまり無駄がなくなるわけです。

【10】子育てにこそ使える!

「マインドフルネスウォーキング」は一呼吸=半歩でスローモーションのようにゆっくり歩き、一歩一歩の歩みに意識を向けるトレーニング。子どもを抱っこして行えば、子どもの気持ちも落ち着いてくる
「マインドフルネスウォーキング」は一呼吸=半歩でスローモーションのようにゆっくり歩き、一歩一歩の歩みに意識を向けるトレーニング。子どもを抱っこして行えば、子どもの気持ちも落ち着いてくる

 わが家にも新生児を含め、3人の子どもがいます。第二子は2歳で、夜泣きもしますし自己主張も強く感情を爆発させることもあります。23時くらいに泣き出されたら、私も仕事で疲れているので、眠りたいし不快だなぁと一瞬感じて、怒りも出てきます。でも、この子が眠れないのには理由があるんだなとすぐに落ち着いて考えられる。そのときに、例えば抱っこひもをして暖かくして、ゆっくり「マインドフルネスウォーキング」というやり方で子どもの呼吸を感じ取りながら30分くらい歩き、子どもが落ち着いていくのを見ていきます。初めはだるいなとか、疲れているのになとか考えるのですが(笑)、それもだんだん落ち着いて、こうして抱っこして歩けるのも今しかない、瞬間を大切にして育てよう、向き合ってみようと感じられるようになると、疲れもなくなりじんわり温かい気持ちになって、ハッピーに感じます。気づくと子どもは眠っているので、そのまま寝かすわけです。

 「子どもがなかなか寝ない!」と焦ったりしていると、子どもにそのイライラが伝わって余計眠れなくなるものですよね。結局、待つしかないんです。それをイライラしながら待つのか、受け入れて見守るのかで、大きく違ってくるでしょう。

 相手をコントロールするのではなく、見守るというスタンスは、ビジネスでもプライベートでも変わらないと思います。

ワーママ&パパが一番取り入れやすそうなのが「ボディスキャン」。布団などに横になり、目を閉じた状態で、CTスキャンをするように、足の指の爪先あるいは頭のてっぺんから順番に、体のすべての部分に意識を向けていくというもの。例えば、市販の「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク」などで目を温めながら行えば、リラックスしやすくなってよさそう
ワーママ&パパが一番取り入れやすそうなのが「ボディスキャン」。布団などに横になり、目を閉じた状態で、CTスキャンをするように、足の指の爪先あるいは頭のてっぺんから順番に、体のすべての部分に意識を向けていくというもの。例えば、市販の「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク」などで目を温めながら行えば、リラックスしやすくなってよさそう

長谷川洋介

長谷川洋介(はせがわ・ようすけ)

東京マインドフルネスセンター/センター長・ディレクター。

医療法人和楽会 ヨーガ講師。東京マインドフルネスセンターにて指導。法政大学卒業。2006年ヨーガを始める。(社)ヨーガ療法学会 ヨーガ講師養成講座修了、東洋鍼灸専門学校卒業、鍼灸師(国家資格)、あんまマッサージ指圧師(国家資格)、ジョン・カバットジン博士「MBSRワークショップ」修了。介護予防運動指導員。公式サイトは東京マインドフルネスセンターオフィシャルブログ

(ライター/山田真弓)