【6】1分でできるマインドフルネスはない

 スポーツでも音楽でも何でもそうだと思いますが、「身に付ける」ためには時間がかかるものです。マインドフルネスを身に付けるまでには時間とエネルギーがかかります。結局繰り返し行うことだけが身に付ける方法なのです。

 仕事中に正しく椅子に座って深呼吸するとか、短時間で行うマインドフルネスのメソッドは気分転換にはなるでしょう。あるいは風邪を引いたときに薬を飲めばパッと症状が治まるのと同様に、マインドフルネスを1分やれば気持ちが静まるというような、短絡的な表現をするケースがあるかもしれませんし、そういう方法が良いと思う人も多いかもしれません。ただ、本質的なマインドフルネスを身に付けたいのであれば、かなり地味に淡々とした作業を続けるしかありません。「じっとして動かず、呼吸に注意を向けていてください、それを20分、30分行ってください」といったことを毎日続けるわけです。しかも呼吸に注意を向けている間に思考や雑念が出てきたら、最初に戻る。その繰り返しですから、地味以外のなにものでもありません(笑)。

左は正しくない座り方。腰が起きていないため骨盤も落ちている状態で猫背になっている。右は腰を起こし、背筋を伸ばして浅く座る正しい座り方
左は正しくない座り方。腰が起きていないため骨盤も落ちている状態で猫背になっている。右は腰を起こし、背筋を伸ばして浅く座る正しい座り方

【7】MBSRプログラムは1日45分×8週間!

 私自身はジョン・カバットジン博士の「MBSRワークショップ」「米国マサチューセッツ大学医学部MBSR-マインドフルネスストレス低減法プログラム」を修了しています。これは1日45分間の、8週間続けていくと効果が出るということが確認されているプログラムで、仏教の「禅」の思想がもとになりつつも、誰もが活用できるように目的やプロセスがメソッド化されています。

 大きく分けると下記の5つになります。

(1)静坐瞑想
(2)歩行瞑想
(3)ボディスキャン
(4)ヨガ瞑想
(5)生活瞑想(食事など)

 これらを45分かけて行います。

 例えば東京マインドフルネスセンターのプログラムには「ヨーガ(自分の感覚と向き合う)」「メディテーション(静坐瞑想)」「マインドフルネス イーティング(食べる瞑想)」「ボディスキャン(身体のすべての部分に意識を向ける)」「ウォーキング メディテーション(一歩一歩の歩みを丁寧に確認する)」「シェアリング(気づきの共有)」「フィードバック(自らを洞察し理解する)」「レクチャー(講話)」があります。

 このうち「メディテーション」は調身・調息・調心を行い心身を整えていくもので、簡単にいえばまず正しい姿勢で座り、身を整える。次に呼吸に意識を向け、呼吸を整え、呼吸を観察していく。そして体が整い呼吸が整った状態で、心の落ち着いた感覚を観察していくというものです。

 でもこの「正しく座る」ということからまず、意識できている人は少ないですよね。

トレーニングの一例。呼吸瞑想法ではまずいすに座ることから
トレーニングの一例。呼吸瞑想法ではまずいすに座ることから

 例えば椅子を使う場合、正しく座るにはまず深めの椅子に背中に背もたれが付かないように浅く腰かけ、腰を起こすことで骨盤を起こし、顎を引いて背筋をしっかり伸ばす。背筋は伸ばすが反らないように。肩は力を抜いて軽く落とします。それから目を閉じて力を抜き、手は力を抜いた状態で膝の上にそっと置く。足は少し開いて体勢が安定するようにし、足の裏は床にしっかり着いていることを意識します。

 この座り方ができてから呼吸を意識していき、メディテーションに入るわけです。ただ、難しく考え過ぎる必要はなく、日々のトレーニングで習得していけるものです。