【3】自分の殻に閉じこもらず、自分の理想像を手離せるようになる

 多くの人が「自分はこうあるべき、こうあらねばならない」という自分の理想像を持っているのではないかと思います。でも現実の自分とは差がありがちです。すると、その理想像に苦しめられるようになる

 それがマインドフルネスを取り入れることで、「冷静に客観的に」自分を見ることができるようになりますから、自分を苦しめる理想像さえも、一度手離せるようになります。今の自分はどういう状態なのか、「冷静に客観的に」という視点を持って対峙できると、自分の殻に閉じこもらなくてよくなるんです。また、ビジネスにおいても、家庭においても自分がコミュニケーションを取る相手との関係性に気づけるようになると思います。

 例えば、仕事上で解決したい問題があったときに、上司がワンマンで話を聞いてくれないタイプの人だったとしましょう。その上司に対し、「あの人には言っても無駄だから話さないでおこう、これは自分の内にとどめておこう」という方法は、一見、摩擦を起こさないために有効に思えるかもしれません。でもそれは結局、自ら気持ちを閉じた状態。自分の殻に閉じこもることになります。しかも、気持ちを閉じられた相手は、それを感じ取るものです。するとコミュニケーションを取る努力を回避したことで、お互いに「あいつは話を聞かない」「あの上司は話を聞いてくれない」と話す前から思うようになり、「自分のやりたいことができないから、仕事を辞めるしかない」ということさえ起きかねません。

 もちろん、直属の上司が全く心を閉ざしているケースもあるでしょう。そのときにはただ不満を内側にためこむのではなく、さらに上の上司に相談をしたり、外部の人に相談をしたりするなど、意識的に心をオープンにしてコミュニケーションを取っていくことも、有効でしょう。

【4】リーダーになる人こそマインドフルネス

 経営者を含め名だたるリーダーたちがマインドフルネスを取り入れているのは、最も「気づき」が必要なポジションにいるからです。

 私自身、会社員として10年以上働き、中間管理職的な立場で上司と部下の間に挟まれて難しいときもありました。当時は外側にばかり評価を求めていて、競争意識をつくっていました。でもマインドフルネスを知っていれば、変に派閥をつくったり、競争意識をあおったりするようなことをせずに、自分の得手不得手を把握し、得意な人に得意なことを割り振り、チーム全体としてより円滑に良い仕事ができたのではないかと思っています。

 今やスマートフォンやパソコンに向かわない人はいないのではないかと思うほど、人間の時間はデバイスに取られてしまっています。だからこそ、マインドフルネススピーキング、マインドフルネスリスニング──米国ではマインドフルネスコミュニケーションと言われることが多いのですが、自分が発するメッセージにも、相手が発するメッセージに集中していくことに意味があると思います。

【5】「ながら聞き」では伝わらない! 情報は「シェアリング」

 マインドフルネスコミュニケーションは、“自分が自分が”と「我」でコミュニケーションを取らないことです。相手の立ち位置に立って情報を伝達し合うこと、つまり「シェアリング」が大切です。

 例えば「東京マインドフルネスセンター」では、毎日、10~20人程度のグループでヨーガやメディテーション(瞑想)などのプログラムを行っています。プログラム後は参加者にヒアリングをし、その日の体験をシェアする(分かち合う)時間を設けています。シェアリングでは、その日の体験を相手に伝えようという努力をすること、そして聞く人はしっかり話を聞くということに、注力してもらいます。

 話を聞くというのは、発している「言葉」に耳を傾けるだけでなく、ジェスチャーや表情まですべてを受け取るという作業です。

 普段のコミュニケーションでも「ながら聞き」では、伝わりにくくなりますよね。

 シェアリングで気を付けたいのは、相手の立場を考えて行動することではなく、相手の立ち位置に立って受け止めるということ。どちらかというと思いやりに近いですね。自分の行動によって相手のことをコントロールするのではないのです。あくまでも優しく包む、見守る視点を持つということになるかと思います。