田房 あ。それでいうと、私、今、妊娠中なんだけど、つわりがひどかった時期、「今だけでいいから夫にオネエになってほしい」って思ってました。日中、体調が悪い中、上の子と二人きりで過ごすのがすごく心細くて、仕事から帰ってきた夫に女性口調で「もぉ~、いいからっ、アタシが全部やるから、寝てなッ!」とか言ってほしい……ってめっちゃ思ってた。

 だけど実際は、帰ってきても自分の分担だけを淡々とこなすんですよね、夫。当たり前だけど。いつもはそれで十分だけど、弱ってる時は「オネエ口調で私をいたわってくれ……」って、よく分からない要求で心がいっぱいでした。

 でも、そんなのかなうわけもないので言葉にしなかった。

水谷 私はたとえ、無理だと思っても言葉にしてみるかな。

田房 えっ? 「オネエになって」って言うの?

水谷 言う。

本心を伝えるのは、相手に対するサービス

田房 マジかい。すげえや。

水谷 「私は今、このように言ってほしい」と言葉にして言いますね。「こういう台詞を言ってほしいのは私がこういう気持ちだから」ということも伝え続ける。すると、だんだん「なるほど、こういう行動は、こういう気分やこういう心理に基づいているものだ」と分かってもらえるようになる。

 最近、子どもの教育に関する本で読んだことの受け売りなんですけど。分からない問題を解けるまで延々と考えさせるのではなくて、分からなかったらすぐに答えを見せろという教訓があったんです。まず答えを見て、なるほどと思ってもう一度やってみる。その時に解けたら理解できた証拠。答えがわからないものを考え続けるのは苦痛なうえに非効率だって。だから、夫にも先にこちらの答えを教えて何を察してほしいか言ってみるのも手だと。

田房 そうか。いやでも待って、私「オネエになって」って、いきなり言えるかな……。

水谷 たとえば、旦那さんが仕事から帰ってくる前に「玄関を開けたらまず『大丈夫?』と聞いてほしい」って、LINEやメールに送って先手を打つとか。

田房 ……(考え込む)。言えないよー(笑)! なんか、相手の負担になってしまうんじゃないかって思っちゃうから。

水谷 その発想が、私は逆なんですよ。伝えるのは相手に対するサービスだと思うから。

田房 なるほど。そうか。「オネエになってくれない」「オネエになってほしいという私の気持ちを察してくれない」って一人で勝手に不機嫌になってるなら、伝えたほうがいいもんね。

水谷 私がコミュニケーション過多なのは、サービス精神によるものなんです。「今日何食べたい?」って夫に妻が聞いたら「なんでもいい」って言われて、でもカレーを作ったら「オレ今日カレーだったんだよ」って言われてイラっとした……みたいな話ってわりと聞くと思うんですけど、やっぱり「なんでもいい」みたいな答えって、相手に対してサービス精神がないなって。相手は喜んでもらいたいから聞いてるんだから、自分の中で「正解」が思い浮かばなくても、、最低限、「自分が何をしてもらったら嬉しいか」を伝えることが相手に対するサービスだと思うんです。

田房 ほんとだね。「私が何を考えているのか当ててごらん」って黙ってるほうが、いじわるだよね。