そもそも仕事よりも家族が土台

 筆者は、企業だけでなく、スタートアップ、市民参加型のファブラボなど、日本にはない組織形態の視察も行っています。やはりそれぞれが先進的な組織であり、上述したような先鋭的な働き方をすでに実施しています。

 その根底にあるのは、オランダで非常に大事にされてきたある価値観です。

 再び、労働法の専門家アレックスさんの話です。

 「働き方が社会や子育ての環境に影響を与えている、というよりも、まず家族、子ども、という優先事項があって、それに沿って一般的な働き方ができてきた、といえると思います。日本では仕事のために生きているような人がたくさんいると聞きますが、オランダではそれはあり得ないし、周りから理解されるのも難しいです。まず家族、自分の生活があって、そのために仕事をするわけですから。そうすると、子育てや家庭、自分の生活が中心の働き方が主流になるのも当然かと思います」

 つまり、“家族や自分の生活がベースである”という価値観が昔からあって、それがあるからこそ、結果として、今のような働き方になった“、というのです。言われてみれば当然なんですが、日本だと、ついこの点が抜け落ちてしまうことも多いですよね…。

 改めて、このような視点から労働にまつわる様々な施策や法改正などを見直してみると、何かいいヒントが生まれてくるのではないか?という気もします。

 もちろん、オランダの働き方が良い点ばかりかというと、そうでもないようで、「パートタイムで働く人、また派遣会社から派遣されて働く人にとって、昇進の機会が、フルタイムで働く人や正規で働く人に比べ、限られているという現実があります。法律上はパートタイムでも昇進の機会はフルタイム勤務と同様であるべきですが、実際にはそれほど単純ではありません。昇進の機会を減らしてでも子どもとの時間を増やすためにパートタイム勤務をしている、といった話や、オランダの労働市場で女性がある一定以上の地位に就く割合は北欧諸国などと比べるとかなり低い、という情報も目にします」とアレックスさん。

 また筆者の女友達からは「“パパの日”と特別な呼び名があることがあること自体がおかしい。だって、子どもとママが平日に遊んでいても、“ママの日”って言わないでしょ?」と、ごもっともな指摘もありました。

 このように、働き方先進国であるオランダでも、日本と似ているところはまだまだあるようです。

左/街中にある小学校の外観。オランダの小学校は4歳から始まる。右/別の小学校。1年の最後の修了式にそれぞれのクラスが出し物をするも、練習とか一切ないのでグダグダ
左/街中にある小学校の外観。オランダの小学校は4歳から始まる。右/別の小学校。1年の最後の修了式にそれぞれのクラスが出し物をするも、練習とか一切ないのでグダグダ