社会から積極的に離脱する「脱」社会的逸脱が主流に

 現時点では、10代の非行歴を跡づけられるのは1996年生まれ世代までですが、もっと下の、読者のお子さんの世代では、非行少年輩出率はもっと低くなっているでしょう。これをどう見るか。

 非行とは、社会の標準からズレた逸脱行動ですが、近年ではズレる方向が以前とは違ってきている、ということがあるでしょう。非行は、社会に危害を加える「反」社会的逸脱ですが、最近は社会的存在に非ざる「非」社会的逸脱、さらには社会から積極的に離脱する「脱」社会的逸脱が主流になっているように思えます。ベクトルの向きが変わっているわけです。

大人たちの「標準」が時代遅れになっていないか

 まあ、どういう行いが「逸脱行動」かを(偉そうに)決めるのは、上の世代です。若者はいつの時代でも、全体社会の文化とは異なる独自の下位文化(サブカルチャー)を形成しますが、上の世代からすれば、それはしばしば奇抜に映じます。

 そこで大人は偏狭な「標準」を勝手に設け、それから逸脱しているという理由で、若者文化に「締め付け」を加える。警察統計に表れる逸脱行動の量というのは、こうした世代間の葛藤の所産でもあります。

 しかし社会が変わるのは、下の世代が新しいものを持ち込むことによってです。上の世代は頭ごなしにそれをはねつけようとしますが、自分たちの「標準」が妥当か、時代遅れになっていないかを、絶えず反省しないといけません。

 今回の統計で分かるように、最近の世代では非行はめっぽう減ってきています。法を犯す「反」ではなく、「非」(不登校、ひきこもり……)や「脱」(自殺……)に重点が移ってきている。社会参加を忌避する、あるいはそこから離脱していく子どもたち。これは、今の社会に対する年少世代からの警告(異議申し立て)と受け取らねばなりますまい。