凶悪犯を多く出した1985年生まれにはIT化の影響も

 次に、凶悪犯少年の輩出率のグラフを見てみましょう。凶悪犯とは字のごとく凶悪な罪種で、殺人・強盗・放火・強姦の総称です。ここまでのことをやってのける少年は多くないので、グラフの数値はベース1万人当たりの数であることに注意してください。

 凶悪犯を最も多く出したのは、1985(昭和60)年生まれ世代となっています。1998年に栃木県黒磯市で、13歳の中学生が女性教師をナイフで刺し殺す事件が起きましたが、凶行に及んだ生徒はこの世代に属します。世紀の変わり目において、「キレる子ども」と恐れられた世代です。

 生育史については、先ほど触れた1986年生まれ世代と同じことがいえます。未曽有の好況期から不況期への転落を、多感な思春期に経験したことです。10代にかけて社会のIT化(インターネット、ケータイの普及……)に遭遇したことも、大きいのではないかなあと思います。

 この世代が10歳になった1995年は、インターネット元年です。ネット上の有害情報やバーチャル空間に触れ始めるのですが、当時はフィルタリングのような防護柵はなかったですから。今のデジタルネーティブ世代のように、生まれたときからネットに囲まれているのとは違い、10代になってから一気にそれにのめり込む。何の手ほどきもなしに、危険物に触れるようなものでしょう。

 以上、10代の間に非行少年をどれほど出したかを、世代ごとに比較してみました。非行は年齢現象・時代現象ですが、世代現象としての側面も持っています。非行には、個人の生育史が影を落としていることが常ですが、世代という群で見ると、マクロな社会のゆがみの影響も、おぼろげながら見えていきますね。