団塊世代は非行世代だった?

 とはいえ間違いとばかり言い切れない面もあります。非行世代について、ウィルキンスというイギリスの犯罪学者による研究があり、幼少期に劣悪な条件で育った世代が非行世代になるという見解が発表されています(Leslie T. Wilkins “Delinquent Generations” A Home Office Research Unit Report, 1960、松本良夫『図説 非行問題の社会学』光生館、1984年)。

 なるほど、わが国でいうと団塊の世代に当てはまりそうですね。この世代は戦後間もない混乱期に生まれましたが、非行の第2ピークの担い手で、改造バイクで走り回り(カミナリ族)、大学に入ったら学生運動で大暴れするなど、いろいろやってくれました(関連記事「最も幸運なのは団塊世代!? 最も苦労したのは…?」)。若気の至りに高度経済成長という時代の追い風が吹いたためでしょうが、食べ物もロクにない混乱期に、人格の礎が築かれる幼少期を過ごしたためかもしれません。

非行少年輩出率は1986年生まれ世代で2番目のピークに

 今問題にしている1968年生まれ世代は、環境問題や公害など、高度経済成長のゆがみが顕在化してきた時期に生まれ、物心がついたころにオイルショックが起き、人々が血眼でトイレットペーパーを奪い合う光景を目の当たりにしました。幼少期の生育条件を重視する、ウィルキンスの説には含みがあるように思えます。

 再びグラフを見ると、非行少年輩出率は1986年生まれ世代で2番目のピークになります。幼少期では、世間はバブル経済で浮かれていましたが、思春期にさしかかった時期に、経済状況が奈落の底に落ちるという激変を経験しています。この世代が12歳になった1998年は、自殺者が急増し3万人を超えた年です(1998年問題!)。お父さんがリストラに遭った、なんていう子も多かったのでは……。