育った時代状況が「世代」に影響する
こんにちは。教育社会学者の舞田敏彦です。年明け早々ダークな話題ですが、今回は少年非行のお話です。具体的には、各世代が10代の間に犯した非行の量(magnitude)を明らかにしてみようと思います。
「世代」とは同じ時期に生まれ、育った時代状況を共有する群をいいます。私は「世代」は人間理解のキー変数であると思っており、世代論は好きです。人間は、育った時代状況の刻印を帯びるもの。とりわけ、人格形成がなされる幼少期から青年期までを、どういう時代で過ごしたかが重要になります。
10代の間にしてしまった非行の量も、世代によってかなり異なるでしょう。最も悪かった世代は? 当局の非行統計を基に、この点を明らかにしてみましょう。読者の多くは私とほぼ同世代かと思いますが、自分たちの「ワル」の軌跡を振り返ることで、子育てに対する姿勢(構え)がちょっとばかり変わるかもしれません。
少年犯罪数、1976年生まれと1996年生まれを比べると
今回は警察庁の『犯罪統計書』に当たって、非行の世代統計を独自に作ってみました。私は1976年生まれで、この世代は10年後の1986年に10歳となります。この年の10歳の刑法犯補導人員は2022人(14歳に満たない触法少年の場合は、「検挙」ではなく「補導」といいます)。1987年の時点で11歳で、同年の11歳の刑法犯補導人員は2627人……。
この統計を19歳(1995年)までつなぎ合わせ、合算することで、1976年生まれ世代が10代の間に輩出した非行少年の総量を知ることができます。少年の場合、刑法犯の多くは万引きのような窃盗罪ですが、シリアス度が高い凶悪犯の数も拾ってみましょう。
表1は、結果を整理したものです。20歳下の1996年生まれ世代の非行歴と対比しています。
赤字はピークの年齢ですが非行全体で見ると、1976年生まれ世代は15歳だったのが、1996年生まれ世代では14歳となっています。凶悪犯のピーク年齢も18歳から16歳に下がっています。よくいわれる、非行の「低年齢化」傾向です。