人としてせっかく生かされている中で、死ぬ間際に精一杯生きてきただろうか、と自分に問うたときには、迷いなく「イエス」と言いたい。だからこそ、アナウンサーとしての仕事がある限りは、フルに“伝え手”として頑張りたいと思っています。そのためにも、アナウンサーとしてのクオリティーがキープできるよう努力は欠かせません。

 アナウンサーの仕事は、例えるなら「試験勉強」に似ているところがあります。オンエアの本番に向けて最もいい成果を出せるように、集中して情報を調べたり、本を読んだり、時には人から直接話を聞いたりして、知識を深めインプット。“テスト=本番”のテーマや範囲は毎日変わり、オンエアの進行状況に合わせて、蓄えた知識の中から適切にアウトプットしていくのが日々の仕事です。生放送の場合は失敗すれば多くの視聴者の方々が見ることになります。世に広く情報を伝えるメディアに携わる者としてクオリティーを高くキープするために、子育てと両立しながらどこでインプットの時間を作っていくかがポイントです。

 勉強の範囲が多岐にわたるので、移動時間も最新のニュースを常にチェックしていますし、美容院の待ち時間にファッション誌を横目に新聞を読むことも。空き時間があれば、エッセイや実用書など現実の世界ばかりに目が向いてしまうので、時にはもう少し非日常的な本を読みたいと思うときもあります。でもこの生活を20年以上続けてきたことで、人の感情や他人の歴史、世の中で起きていること、歴史認識、言葉のチョイスなどすべてにおいて視野が広がりましたし、人としての厚みが出たと思います。アナウンサーは圧倒的な緊張感のある仕事で、他ではなかなか感じられない刺激を感じられることが、この仕事の醍醐味。ここ数年はやっとそれを楽しめるようになってきましたね。

 健康管理も重要です。通勤中はマスクをして、風邪を予防。喉を痛めないように気を付けています。あとは、女性アナはどうしても見た目も問われる職業。できるだけ頑張って若々しくキレイでいようと、抗うところです(笑)。

度重なるハプニングも! 夫なりに子育てを頑張ってくれることに感謝

 生放送で培った「極限状態での判断」を仕事で日常的にやっているので、私生活で起こる色々な急場に対処しやすいという長所が身に付きました。夜遅い帰宅で子ども2人を夫に見てもらう場合は、夜ご飯を作ってから出かけるようにしています。「学童と保育園に迎えに行って、ごはんを温めて食べさせ、お風呂に入れて、できるだけ9時までに寝かせて」とメモ書きでタイムスケジュールを作り、夫に伝えます。が、守られたことは一度もありません(笑)。一度夜の10時半ごろに家に帰ってきたら、まだ部屋の明かりが煌々とついていたことがあり、「タイムスケジュールまで作ったのに!」と、さすがに怒りが収まらず、くるりと引き返して駅前まで買い物に出かけたことも。再度帰宅するまでのその後の30分で子どもが寝てくれたため少し怒りが収まり、事なきを得ることができました。

 最初は思い通りにいかない怒りをそのまま夫にぶつけていたのですが、お互い他方面へのさらなる爆発を生むので、感情的に責めないようにグッと我慢しています(笑)。

 夜はなるべく子どもと一緒の時間に眠ります。夫が遅く帰ってくるときは、夜ご飯をみんなの分と一緒に作って、「これは〇秒温めてください」というメモ書きを残しますし、冷蔵庫におかずが入っている日は、冷蔵庫の中にも大きく「〇〇」とおかずの品目を書いてお皿に貼っておきます。

 過保護に思われるかもしれませんが、というのも、夫に任せきりにしておくと信じられないことが起きるんです! まだ子どもがいないころ、私が仕事で遅くなってしまい、夫に「ごはんを炊いておいて」とお願いしました。すると、家に帰ってきたら、まるでカニのあぶくのように炊飯器から泡が出ていてお粥が出来上がりました……。どうやら水分量を間違ったようで周り一帯が水浸し。そのカニあぶく事件からは、食事についてはとくに細かく指示出しをするようにしています。私からすると「なぜここに気が付かないのかな」「時計を見ていないでしょう!」と思うことも夫にはたくさんありますが、なるべく目くじらをたてないようにしています(笑)。

 二人目が生まれた後、二人をそれぞれ別々の預け先に送らなければならず、夫婦で分担することに決めました。夫は息子担当になったので、その流れで今でもほぼ毎日保育園に送ってくれていますし、長女の小学校で親の出番があるときには私の代わりにたくさん出動してくれて大変助かっています。夫なりに子育てを頑張ってくれることに心から感謝しています。